会社全体でAI活用をどう設計すればいいか、分からずにいる経営者へ向けて書いています。私たち株式会社One Ismは、地方の再興とAIマーケティング支援を仕事にする中で、社内の業務にもAIを取り入れてきました。1つの万能AIに全部を任せるのではなく、業務の種類ごとに専用の使い方を用意しています。その全体像をお伝えします。
会社全体でAIを使うと聞くと、1つの高性能なAIに何でも任せる姿を思い浮かべるかもしれません。私たちは、そうしていません。業務の種類ごとに、担当を分けています。
ここから先は、なぜこの形にたどり着いたのか、実際の数字も交えながら順を追ってお伝えします。
1つのAIに何でも任せれば、管理はシンプルになります。ただ、私たちの実感では、業務が広がるほど、精度が落ちやすくなります。
広告の数字を見る作業と、文章を書く作業では、求められる正確さの種類が違います。数字は間違いが許されません。文章は、間違いよりも、伝わり方の質が問われます。同じ役割にまとめると、どちらかの精度が犠牲になりがちです。
もう一つの理由は、確認のしやすさです。作る役割と確認する役割が同じだと、見落としに自分で気づけません。役割を分けておくと、別の視点で見る一手間が、自然に工程の中に入ります。
私たちは、自社でこの旅館を運営しながら、広告運用・データ基盤の構築・記事執筆など、性質の異なる業務を同時に抱えています。業務ごとに求められる精度の種類がまったく違うことを、日々の運用の中で実感してきました。だからこそ、1つのAIにまとめず、業務単位で役割を切り分けています。
私たちがこの形にたどり着いたのは、最初から設計図があったからではありません。業務ごとに小さく試し、うまくいった形だけを残してきた結果です。
具体的な設定や個別の手順までは公開できませんが、どういう粒度で役割を分けて、どんな数字につながっているか、実際のデータを交えてお伝えします。
配信中の広告の数字を、毎日一定のタイミングで確認する役割を置いています。数字が普段と違う動きをした時に、人へ知らせる仕組みです。良し悪しの判断材料をまとめる役割と、改善案を考える役割も、別に分けています。
この体制で、自社運営の旅館の広告では、月額広告費30万円の配信で最高ROAS1,200%超を記録したことがあります。広告費の10倍以上の売上が、その広告経由で生まれた計算です。数字を毎日見る役割と、改善を考える役割を分けたことで、良い配信パターンを早く見つけ、悪い配信パターンを早く止められるようになりました。
情報を集めて下書きを作る役割、文章を整える役割、画像や動画の素材を作る役割を分けています。1つの工程を1つの役割に絞ることで、後から直す箇所が見つけやすくなります。
この記事を含む当社のコラム記事も、この工程で作っています。情報を集めて骨子を作る役割と、文章を整える役割を分けたうえで、最後に必ず確認の工程を通しています。
毎日決まった項目の数字を集め、見やすい形にまとめる役割です。人が毎回同じ作業をくり返す必要がなくなり、数字を見て考える時間に使えるようになりました。
たとえば当社サイトoneism.jpでは、AIがGA4とSearch Consoleの数字を毎日自動で集計しています。直近28日間では、アクティブユーザー2,031人、新規ユーザー1,961人、検索クリック568回、表示回数6,023回、平均クリック率9.43%、平均掲載順位9.92位という数字が出ていて、検索経由の流入が全体の約57%を占めています。誰かが毎回2つのツールを開いて見比べなくても、数字がまとまった状態で出てくる、というのがこの役割の仕事です。
作られた文章や資料を、作った側とは別の観点で確認する役割です。誤りがないか、事実と違う記載がないか、伝わる形になっているかを、世に出す前に必ず通します。基準に照らして合格か不合格かを判定し、不合格の場合は直し方までつけて、作った役割に戻します。
締切や、対応が止まっている案件がないかを整理する役割です。抜け漏れに人が気づく前に、機械的に拾い上げます。
業務ごとにAIの役割を分けていく中で、私たちも何度かつまずきました。同じように進めようとする方のために、代表的な3つと、その対処法を共有します。
最初から今の形だったわけではありません。1人が広告の確認から改善案作りまで一貫して担当していた時期は、数字を見る頻度がどうしても週1回程度になり、変化に気づくのが遅れることがありました。文章も、書く人がそのまま確認まで行っていたため、精度にばらつきが出ていました。
役割を分けて、AIが毎日数字を確認する体制にしてからは、変化に早く気づけるようになりました。結果として、自社運営の旅館では前年同月比240%の売上、最高月商1,100万円、SNS総フォロワー3万人超という数字につながっています。広告費46万円のスクール事業では月商387万円を、北海道のホテルでは1年で売上が約6倍になった実績もあります。役割分担そのものがすべての要因ではありませんが、数字を毎日確認し、改善案を考え、確認する、という一連の流れを分業で回せるようになったことが、土台になっています。
業務ごとに分けることで、得られたものは主に3つです。
逆に、分けたことで手間が増えた部分もあります。役割同士の受け渡しを整える必要があり、最初の設計には時間がかかりました。それでも、後から直しやすい形になったことのほうが、私たちにとっては大きな利点でした。
私たち株式会社One Ismは、2023年7月に資本金100万円で設立した、決して大きくない会社です(代表:大橋祐哉)。それでも、この考え方は実践できています。理由は、大がかりなシステム投資が前提ではないからです。
必要なのは、業務を細かい単位に分けて、それぞれに合った使い方を少しずつ試すことです。最初から全部を整える必要はありません。私たちも、1つの業務から始めて、うまくいった型だけを他の業務にも広げてきました。
人数が少ない会社ほど、1人が複数の業務を抱えがちです。だからこそ、業務ごとに役割を分けて整理しておくことが、少ない人数で回すための支えになると感じています。
私たちは、人を採用する時にも「志」「至誠」「円融自在」という3つの基準を大切にしています。AIの役割を設計する時も同じで、それぞれの役割に何を期待するかをはっきり決めることを大切にしています。曖昧なまま任せず、役割の輪郭をはっきりさせることが、AIでも人でも共通の土台だと考えています。
私たちは、①自社で旅館を運営する、②その型を他の宿へ広げる、③地方の若者に挑戦の場をつくる、④宿から地域全体へ広げる、という4本柱で事業を進めています。この設計は、自社の業務だけでなく、地方の再興とAIマーケティング支援という事業を通じて、支援先の会社にも役立てています。
ここまでの考え方を、自分の会社に当てはめてみましょう。専門知識がなくても、以下の手順どおりに進めれば迷いません。
1つの業務でこの3ステップを試して、うまくいった型ができたら、次の業務に広げる。私たちも、この繰り返しでここまで来ました。
楽に見えますが、私たちはおすすめしていません。業務ごとに求められる精度や確認の仕方が違うため、1つのAIに任せきると、どこかで確認が甘くなりやすいと感じています。業務単位で分けたほうが、結果として手間が減りました。
大がかりなシステムは必要ありません。私たちも、最初から全業務を分けたわけではなく、1つの業務から少しずつ型を作りました。小さな会社ほど、身軽に始められると感じています。
毎週か毎月、同じ手順でくり返している業務からがおすすめです。手順が決まっているほど、AIに任せる範囲を切り分けやすいためです。データ集計やレポート作成は、比較的始めやすい領域です。
業務の内容によって差はありますが、1つの業務であれば、数週間で最初の型ができることが多いです。完璧を目指さず、小さく試して直しながら育てる進め方をおすすめしています。
作る工程と確認する工程を分けることで、品質は保てると考えています。私たちも、作ったものをそのまま出さず、別の観点で確認する工程を必ず挟んでいます。任せきりにしないことが大切です。
役割分担そのものが唯一の要因ではありませんが、目に見える結果にはつながっています。自社運営の旅館では最高ROAS1,200%超(月額広告費30万円)、前年同月比240%の売上、最高月商1,100万円を記録しました。広告費46万円のスクール事業では月商387万円、北海道のホテルでは1年で売上が約6倍になっています。
あります。1つの役割に任せすぎて確認を省いた結果、見落としが起きたことがありました。今は、作成役と検証役を必ず分け、出来上がったものをそのまま出さないようにすることで防いでいます。失敗を踏まえて工程を直す、というくり返しでここまで来ました。