AI活用を検討しているが、大手企業の話ばかりで自社に当てはまるか分からない。そう感じている地方の経営者へ向けて書いています。私たち株式会社One Ismは、2023年7月に設立した、地方の再興とAIマーケティングの支援を仕事にする少数精鋭の会社です。人を増やす選択肢もあった中で、なぜAIエージェント的な活用を選んだのか。正直な判断の背景をお伝えします。
結論から先にお伝えします。私たちがAIエージェント的な活用を選んだ理由は、主に4つです。
私たちは2023年7月、資本金100万円で設立した会社です。設立当初から人手は限られていました。だからこそ、限られた人数でどこまで業務範囲を広げられるかが、最初からの課題でした。
ここから先は、比較検討した過程、AIが担う業務範囲が実際にどう広がっていったか、そして見えたリスクと対処を、順番にお伝えします。
人手が足りない、専門性が足りない。そう感じた時、選択肢は大きく3つあると考えています。「人を増やす」「外注する」「AIを活用する」です。私たちも、この3つを順番に検討しました。
まず考えたのは、社員を増やすことでした。もっとも王道の選択肢だと思います。ただ、採用には募集から入社まで時間がかかります。地方であればなおさら、母集団の形成そのものに時間がかかります。
入社したあとも、業務を任せられるようになるまで育成の期間が必要です。広告運用ひとつを取っても、一人前になるには数字を見る目が育つまで時間がかかります。目の前の課題は待ってくれません。この時間差が、私たちにとっては大きな壁になりました。
次に考えたのは、専門会社に外注することでした。即戦力という意味では、採用より早く動けます。ただ、依頼のたびに費用が発生し、修正のやり取りにも時間がかかります。繁忙期に依頼が集中すると、対応の順番待ちが発生することもあります。
何より、任せた分だけ、判断のノウハウが自社の中に残りません。「なぜこの広告文にしたのか」「なぜこのキーワードを狙ったのか」という判断の根拠が、外部にとどまったままになります。契約が終われば、その根拠も一緒に失われます。少数精鋭でやっていく私たちには、この積み上がらなさが合いませんでした。
最後に検討したのが、AIを使って業務を進める体制でした。繰り返しの多い業務であれば、指示の型さえ作れば、採用や外注よりも早く動かせます。広告の数値集計、SEOの診断、SNSの投稿企画といった業務は、一度型を作れば、次からは同じ質を保ったまま繰り返せます。
小さく試して、合わなければ引っ込める。契約更新や退職といった手続きを挟まずに、その日のうちに範囲を広げたり狭めたりできます。この身軽さが、私たちの規模とスピード感に合っていると感じました。
3つを比較したうえで、私たちはAIを軸にする体制を選びました。理由は一つではありません。地方特有の事情も含めて、正直にお伝えします。
私たちは地方の小さな町を拠点にしています。都市部と違い、専門スキルを持つ人材が、近くにたくさんいるわけではありません。求人を出しても、応募自体が集まりにくいのが実情です。移住を前提にした採用も検討しましたが、条件を整えるだけでも時間がかかります。
私たちは、少数精鋭でやっていく方針です。人を一人採用すると、成果の有無にかかわらず、毎月の固定費が発生し続けます。事業として、まだ売上の波がある段階で、固定費を先に積み上げることには慎重でした。AIであれば、使った分だけの費用で、小さく始められます。
地方の再興に関わる仕事は、正解が最初から見えているものではありません。試して、結果を見て、直す。この回数をどれだけ増やせるかが、成果につながると考えています。採用や外注は、一つの体制を整えるまでに時間がかかります。AIであれば、その日のうちに試して、その日のうちに直せます。
私たちには、4つの柱からなるビジョンがあります。①自社で旅館を運営する、②その型を他の宿へ広げる、③地方の若者に挑戦の場をつくる、④宿から地域全体へ広げる、という流れです。この4つを少人数で同時に進めるには、広告運用・SEO対策・SNS運用・LINE運用・PR・経理といった機能を、最初から幅広くカバーする必要がありました。
人を増やす場合、機能ごとに専門の担当者を揃えることになります。地方拠点で、それだけの職種を一度に採用するのは現実的ではありませんでした。この事業設計そのものが、AIを軸にする体制を後押ししたと感じています。
「人を増やす」「外注する」のどちらも、間違った選択肢ではありません。ただ、地方で・少数精鋭で・スピードを重視し・広い業務範囲を担う必要があった私たちにとっては、AIを軸にする体制がもっとも現実的だった、というのが正直なところです。
比較検討の話だけでは、抽象的に聞こえるかもしれません。ここでは、実際にAIが担う業務範囲がどう広がったか、Before/Afterの形でお伝えします。
設立してすぐの頃は、広告運用も、SEO対策も、SNS運用も、LINE配信も、経理も、限られた人数でひとつずつ手をつけていく状態でした。ひとつの業務に時間を取られると、別の業務が後回しになります。手が足りない、という感覚が常にありました。
いまは、業務の機能ごとにAIが役割を分担しています。広告の数値集計と診断、SEO/MEOの実データ診断、SNSの企画・投稿、LINE配信のシナリオ設計、PRの企画書づくり、経理の記録整理。これらを並行して進められるようになりました。人が増えたわけではありません。ひとつの機能をひとりの人が抱え込む代わりに、機能ごとにAIへ型を渡す形に変えた、ということです。
この体制で実際にどんな数字が出ているか、具体的にお伝えします。数字はすべて実績値です。
業種も規模も違う複数の案件を、同時並行で見られているのは、機能ごとにAIへ型を渡す体制にしたからです。人を業種の数だけ増やしていたら、ここまでの並行対応はできなかったと思います。
ここまで、選んでよかった話と、実際に広がった機能領域を中心に書きました。ただ、うまくいったことばかりではありません。実際につまずいたパターンと、その対処法を正直にお伝えします。
AIに任せる範囲を広げるほど、一つひとつの判断の中身を、人が把握しきれなくなる場面がありました。任せることと、丸投げすることは違います。ここを混同すると、あとから何が起きたか説明できなくなります。
対処として、社外に出るもの(配信文・公開ページ・契約に関わる文書)や、間違えると影響が大きい意思決定は、必ず人が最後に目を通す工程を残しています。任せる範囲と、人が見る範囲を、あらかじめ業務ごとに分けておくことが大切だと感じています。
業務量が増えるほど、AIに出す指示の基準が、少しずつブレていくこともありました。最初に決めた方針から離れていないか、気づかないまま進んでしまう怖さがあります。
対処として、うまくいったことと失敗したことを記録に残し、定期的に見直す仕組みを持つようにしています。記録がないと、同じ失敗を繰り返しているかどうかにも気づけません。振り返りの頻度を決めて、記録を溜めっぱなしにしないことも意識しています。
効率を優先しすぎて、本来は人が時間をかけるべき判断まで、AIに寄せてしまいそうになったこともあります。特に、一度きりの重い判断や、感情が絡む対応、社外との交渉ごとは、任せる範囲から明確に外すようにしています。
対処として、「繰り返しが多く、型にしやすい業務」と「一度きりで、人の判断力が問われる業務」を先に仕分けしています。仕分けを先にやっておくと、あとから範囲を広げすぎる失敗を防げます。
ここまでの話が自社に当てはまるかどうか、実際に確かめる方法をお伝えします。専門知識がなくても、以下の手順どおりに進められます。
この3ステップを踏むだけで、AI活用が自社の業務量・費用感に見合うかどうかは、ある程度の見当がつきます。
私たちの実感として、この考え方が向いているのは、次のような会社だと思います。
一方で、対人サービスそのものが価値の核になっている業務や、一度きりの重い判断が多い業務では、任せる範囲を慎重に見極める必要があります。すべての会社に、同じ形が当てはまるわけではないと考えています。
付け加えると、AIに任せる場合でも、業務の設計や最終判断には、人の側の基準が必要です。私たちが人を採用する時も「志」「至誠」「円融自在」という3つの基準を大切にしています。この基準は、AIへ渡す指示の型を作る側にも、そのまま求められる姿勢だと感じています。
特別な人格や役割を演じさせているわけではありません。業務ごとにAIへの指示や進め方を型として整理し、繰り返しの多い仕事をAIに任せられる状態にしている、という意味です。あくまで経営判断としての体制の話です。
検討はしました。ただ、地方で必要な専門性を持つ人を採用するのは、想像以上に時間がかかります。採用できたとしても、育成の期間が必要です。いま目の前にある課題のスピードに、採用は追いつきませんでした。
外注も選択肢として比較しました。ただ、依頼のたびに費用がかかり、やり取りにも時間がかかります。加えて、ノウハウが自社に残りにくいという点が、少数精鋭でやっていく私たちには合わないと判断しました。
かかります。無料ではありません。ただ、人を一人採用し続ける固定費や、外注を都度発注する費用と比べると、私たちの業務量に対しては小さく始められました。かけた分だけ、社内にノウハウとして残る点も違いです。
実績としてお伝えできるのは、自社で運営する旅館(創業140年)で、売上が前年同月比240%、最高月商1,100万円まで伸びたことです。広告は月額広告費30万円で最高ROAS1,200%超を記録し、SNSの総フォロワーは3万人を超えています。ほかにも、スクール事業で広告費46万円から月商387万円を達成した例、北海道のホテルで1年で売上が約6倍になった例があります。
繰り返しの業務が多く、地方で採用に苦戦している、少数精鋭でやっている会社に向いていると感じています。逆に、対人サービスそのものが価値の核になっている業務では、AIに任せる範囲を慎重に見極める必要があります。
まず自社の業務を洗い出し、繰り返しの多い業務に印をつけることから始めてください。次に、その業務にかかっている時間と費用を書き出し、人件費や外注費と比べてみます。最後に、いちばん小さい業務ひとつだけで試してみることをおすすめします。全部を一気に置き換える必要はありません。