OTA依存から抜け出す方法
(直販を増やす現実的な手順)

予約の多くがOTA経由で、手数料の負担が重い。そんな旅館・宿の方に向けた記事です。私たちは長野県高山村で、創業140年の旅館を自社運営しています。OTAに頼らない自社集客の基盤を、自分たちの手で作ってきました。この記事では手数料の考え方と、直販を増やす現実的な手順をお伝えします。

自社運営する創業140年の旅館 旅館の外観|OTA依存 脱却と旅館の直販強化
FIELD — NAGANO / TAKAYAMA  ·  この旅館

OTA手数料は、いくら払っているか。

最初にやることは、計算です。自分の宿がOTAにいくら払っているか。この質問に、すぐ答えられる方は意外と少ないのです。

手数料の料率は、OTAや契約プランによって異なります。ここでは仮の数字を置いて計算してみます。

例えば「1泊2万円・手数料15%」と仮定します。すると、1組あたりの手数料は3,000円です。月に100組がOTA経由なら、手数料は月30万円。年間にすると、360万円です。

※この料率はあくまで仮定です。実際の数字は、ご自身の管理画面と契約内容でご確認ください。

料率が変わると、この金額がどれくらい動くかも見ておきます。同じ「1泊2万円・月100組」という条件で、料率だけを変えて並べてみます。

10%
1組あたりの手数料は2,000円。月100組なら月20万円、年間240万円です(仮定の料率での試算)。
15%
1組あたりの手数料は3,000円。月100組なら月30万円、年間360万円です(仮定の料率での試算)。
20%
1組あたりの手数料は4,000円。月100組なら月40万円、年間480万円です(仮定の料率での試算)。

料率が5ポイント変わるだけで、年間の差は120万円になります。まずはご自身の契約が何%なのかを、管理画面で確認するところから始めてください。複数のOTAと契約している場合は、OTAごとに料率が違うこともあるので、それぞれ確認します。

計算のやり方は簡単です。直近3ヶ月のOTA経由の予約数を数える。そこに平均客単価と、ご自身の契約の料率を掛ける。これだけで、おおよその負担額が見えてきます。

誤解しないでほしいのですが、この支払いは「無駄なお金」ではありません。予約という売上を運んでくれた対価です。問題は金額そのものではなく、払い続けても自社で集める力が育たないことにあります。

同じ規模のお金を自社集客に投じたら、何が育つか。まずこの視点を持つことが、脱却の入口になります。

あわせて「直販比率」も出しておく

もうひとつ、出してほしい数字があります。直販比率です。全予約のうち、自社サイトと電話の予約が占める割合のことです。

直近3ヶ月の予約を、経路ごとに数えるだけで出せます。OTAごと・自社サイト・電話に分けて、月1回記録する習慣を作ってください。予約台帳やPMS(予約管理システム)を使っている場合は、経路の列を追加するだけで集計できます。手作業の台帳しかない場合は、まず1ヶ月分だけでもいいので数えてみてください。

この記事の打ち手は、すべて「この比率を上げる」ためのものです。現在地の数字がないと、打ち手が効いたかどうかも分かりません。

手数料の差額をシミュレーションする。

OTA経由と直販とでは、宿に残る金額がどれくらい違うのか。ここも仮の数字で計算してみます。

直販の場合、宿泊予約システムやクレジット決済の手数料がかかります。ここでは仮に3%と置きます。実際の料率は、導入するシステムによって異なります。

1泊2万円の予約が1組入ったとします。OTA経由(手数料15%と仮定)なら、宿に残るのは1万7,000円です。直販経由(決済手数料3%と仮定)なら、宿に残るのは1万9,400円です。差額は1組あたり2,400円です。

これを月100組に当てはめると、差額は月24万円、年間で288万円になります。同じ100組を集めても、経路が違うだけでこれだけの差が生まれます。

※上記はすべて仮定の料率での試算です。実際の差額は、契約しているOTAの料率と、導入する予約システムの手数料によって変わります。まずご自身の契約条件で、同じ計算をしてみてください。

もうひとつ大事なのは、直販には手数料の差額以外の価値もあることです。予約者のメールアドレスや電話番号が、自社に残ります。次のご案内を、広告費をかけずに届けられます。OTA経由では、この連絡先はOTA側に残り、宿には残りません。差額の計算だけでなく、「顧客データが自社に残るかどうか」も、比率を上げる理由に加えてください。

OTAをやめるのではなく、比率を変える。

結論から言います。OTAは、やめなくていいです。

OTAは今も、新しいお客さまと出会うための強力な入口です。宿を探している人が最初に開く場所であり、そこに載らない選択はむしろ機会損失になります。

目指すのは「ゼロにする」ことではなく、直販の比率を上げることです。

新規のお客さまとはOTAで出会う。そして2回目からは、直販で来ていただく。この流れができると、手数料の負担は構造的に軽くなっていきます。

ちょうどいい比率は、宿によって違います。立地・客層・リピートのしやすさで、適正なバランスは変わるからです。だからこそ、まず自分の宿の現在地を数字で知ることが先になります。

私たちがこの旅館で取り組んだのも、この考え方です。OTAと戦うのではなく、OTAの外に「自社で集める柱」を一本ずつ立てていきました。次の章では、その柱の作り方を4つのステップで具体的にお伝えします。

直販を増やす4ステップ。

私たちが実際にやった順番で、4つのステップをお伝えします。

S.01
SNSで宿のファンを作る。予約の前に「行きたい」と思ってもらう。宿の日常・景色・想いを発信し、フォロワーとの関係を育てる。ここが直販の土台になる。
S.02
公式LINEで関係を続ける。一度泊まってくれたお客さまと、つながりを切らさない。再訪のご案内や季節のお知らせを、広告費ゼロで届けられる。
S.03
公式サイトの予約導線を整える。せっかく宿の名前で検索されても、予約しづらいサイトでは離脱される。料金・空室・予約ボタンまでの道を、わかりやすくする。
S.04
広告で自社サイトに集める。SNSとLINEが育つまでの時間を、広告が埋める。数字を見ながら少額から始め、効くものに寄せていく。

大切なのは、順番です。受け皿になるLINEやサイトが整っていない状態で広告だけを回すと、お客さまとの関係が一度きりで終わってしまいます。

まず受け皿を作り、そこへ流し込む。この順番を守るだけで、同じ費用でも積み上がり方が変わります。

ここからは、各ステップで「今日からやること」を、具体的に書きます。

S.01 SNS:今日からやること

最初の1つは、Instagramをおすすめします。宿は写真で選ばれるからです。やることは3つです。

プロフィールに、公式サイトの予約URLを置く。投稿の型(風景・料理・お湯・人)を決める。週3本を目安に続ける。この3つだけです。

フォロワー数を追いすぎないでください。目的は「宿を指名してくれる人」を増やすことです。数より、届く相手との関係が大切です。

最初の1〜3ヶ月は、反応が薄く感じることが多いです。ここで投稿を止めてしまう宿を、何度も見てきました。フォロワーの伸びより先に、保存数やプロフィールへのアクセス数が動き始めます。まずはそこを見て、続けるかどうかを判断してください。

S.02 公式LINE:今日からやること

LINE公式アカウントを、無料プランで開設します。整えるのは、あいさつメッセージとリッチメニューの2つです。

あいさつメッセージには、館内のご案内など泊まる人の「便利」を入れます。リッチメニューは「ご予約」「館内案内」「よくある質問」の3つで十分です。

そのうえで、フロントと客室にQRコードを置きます。チェックイン時に一言添えるだけで、登録は自然に増えます。配信は月2〜3回までにして、売り込みではなく季節のお知らせを届けます。

登録を促す一言は「またお会いしたいので」くらいで十分です。割引を前面に出す必要はありません。宿泊中に登録してもらえれば、チェックアウト後に配信するご案内から、次の予約につながります。

S.03 公式サイト:チェックすること

予約導線は、次の4点を確認してください。トップページから予約まで、2クリック以内で行けるか。料金がはっきり書いてあるか。スマホできれいに表示されるか。「公式サイトが一番お得」と言える理由があるか。

最後の1つが、とくに大切です。OTAより高い公式サイトでは、直販は増えません。公式サイト限定の特典や、最安値の保証を用意します。

確認の仕方は簡単です。スマホで自分の宿のサイトを開き、実際にトップページから予約完了ページまで、自分の指で操作してみてください。迷った箇所、ページの読み込みが遅い箇所、ボタンが小さくて押しにくい箇所。この3つをメモするだけで、直すべき場所が見えてきます。

S.04 広告:今日からやること

Meta広告(Instagram・Facebook)を、少額から始めます。ただし先に、計測(GA4と広告の計測タグ)を整えてからです。計測が整っていないと、どの広告が予約につながったか分からず、効いていない広告に予算を出し続けることになります。

写真ちがいのクリエイティブを3〜5本用意して、CTR1%を目安に差し替えていきます。私たちがこの旅館で運用している広告は、月額30万円の費用で、最高ROAS1,200%超を記録しています。少額からでも、受け皿(LINE・公式サイト)が整っていれば、広告費は着実に売上に変わります。

広告費の決め方と運用基準は、関連記事「旅館の広告費はいくらが適正か」にくわしく書いています。

4つのステップの具体的な支援内容は、旅館・宿の集客支援のページにまとめています。

旅館での実際。

ここまでの話は、机上の理論ではありません。私たちが自社運営するこの旅館で、実際にやってきたことです。

SNSで宿を知ってもらい、公式LINEで関係を続け、広告で自社に集める。この直販の流れを、ひとつずつ自分たちの手で作りました。

SNS総フォロワー
3万人超
自社集客の土台に
売上・前年同月比
240%
前年同月の2.4倍に成長
最高月商
1,100万円
過去最高を記録

SNSの総フォロワーは3万人を超えました。OTAの外に、宿を「指名」してくれる人の集まりができたことになります。

広告は月額30万円の費用で、ROASは最高1,200%超を記録しました。売上は前年同月比240%となり、最高月商1,100万円に届いています。

この「受け皿を作ってから広告を投じる」という順番は、旅館以外の事業でも同じ結果につながっています。私たちが支援したあるスクール事業では、広告費46万円で月商387万円を達成しました。受け皿となる仕組みが先に整っていたからこそ、広告費が効率よく売上に変わっています。

宿泊業でも同じ考え方は通用しました。私たちが支援した北海道のホテルでは、1年で売上が約6倍になっています。業種や規模が違っても、「受け皿を先に作り、そこへ広告で流し込む」という順番そのものは変わりません。

運用そのものは、シンプルです。週に1回だけ数字を見て、効いているものに予算と力を寄せる。効いていないものは、ためらわずに止める。この繰り返しを続けてきました。

直販の基盤づくりは、一朝一夕にはできません。それでも一本ずつ柱を立てれば、OTAに依存しない集客は地方の宿でも作れます。私たちはそれを、自分たちの宿で確かめました。

自社事業 · 長野県高山村 · 実際の運用データ

つまずきやすいポイントと対処法。

順調な話だけでは、フェアではありません。遠回りになった失敗と、その対処法を正直に書きます。

【つまずき1】受け皿の前に、広告を強めてしまう

LINEなどの受け皿が整う前に、広告に力を入れた時期があります。予約は入りました。ただ、お客さまとの関係が一度きりで終わってしまいました。せっかくの出会いを、次につなげられなかったのです。

対処法:広告予算を増やす前に、公式LINEのあいさつメッセージとリッチメニューだけは先に用意してください。この2つがあれば、広告で来たお客さまを受け止める最低限の器になります。

【つまずき2】特典なしで直販を呼びかけてしまう

「次回は公式サイトからどうぞ」と伝えるだけでは、動きませんでした。お客さまにとって、公式サイトで予約する理由がなかったからです。

対処法:「公式が一番お得」と言える状態を、先に作ってください。公式サイト限定の特典や、最安値の保証です。呼びかけは、その後にします。理由がないまま呼びかけても、行動は変わりません。

【つまずき3】直販に気を取られ、OTA上の対応が手薄になる

直販の施策に力を入れるあまり、OTA上のクチコミ返信や写真更新が後回しになった時期もありました。OTAは、比率を下げていく間も、新規のお客さまと出会う入口であり続けます。ここへの対応が手薄になると、新規の出会いそのものが減ってしまいます。

対処法:直販とOTA、どちらにも触れる時間を月のスケジュールにあらかじめ組み込みます。私たちは、月1回の数字チェックのタイミングで、OTA側のクチコミ返信・写真更新もあわせて行うようにしています。

【やらないこと】OTAの掲載を減らすこと

直販を増やす過程でも、OTAの露出は削りませんでした。新しいお客さまとの出会いが減れば、直販に流す元の水も減るからです。入口は広く、関係は自社で。この役割分担を崩さないようにしています。

月1回の直販比率チェック習慣。

ここまでの内容を、毎月の習慣に落とし込みます。私たちは、毎月決まった日にこの4つを確認する運用にしています。難しい分析は必要ありません。

OTAごと・自社サイト・電話の予約数を数え、直販比率を先月と比べる
OTAの契約料率が変わっていないか、管理画面で確認する
公式LINEの友だち数と配信の反応(開封・タップ)を確認する
広告のCTR・予約件数を確認し、効いていないクリエイティブを止める
OTA上のクチコミ返信・写真更新も、あわせて行う

直販比率は、1ヶ月で劇的に変わるものではありません。増えていれば、いま続けていることを続ける。減っていれば、4ステップのどこかが止まっていないかを振り返る。判断はそれだけです。

この単純な繰り返しを続けることが、OTA依存から抜け出す一番の近道だと考えています。

よくある質問

OTAはやめたほうがいいですか。

やめる必要はありません。OTAは新しいお客さまと出会う入口として、今も強力です。目指すのは「直販の比率を上げる」ことです。新規はOTAで出会い、2回目からは直販で来ていただく流れを作ります。

直販はどれくらいで増えますか。

宿の状況によって変わります。SNSや公式LINEは、育つまでに時間がかかります。一方で、広告は比較的早く動きます。だから4つを組み合わせて、時間差を埋めながら進めるのが現実的です。

直販比率はどうやって測ればいいですか。

予約を経路ごとに、月1回数えます。自社サイトと電話予約の合計を、全予約数で割るだけです。まず現在地を知ることが、すべての判断の土台になります。

公式サイトの予約はどう受ければいいですか。

宿泊予約システムの導入をおすすめします。空室管理と予約受付を自動化できます。料金は月額型や手数料型などがあるので、OTAより負担が軽くなる形を選びます。

何から始めればいいですか。

まず、自分の宿がOTAに支払っている手数料を計算してください。金額がわかると、投資の判断ができます。次に、泊まってくれたお客さまとつながる公式LINEなどの「受け皿」作りをおすすめします。

OTA手数料の料率が分からない場合はどうすればいいですか。

契約書や管理画面の「手数料」「システム利用料」などの項目に記載があります。見当たらない場合は、OTAの担当窓口や導入時の資料に問い合わせれば確認できます。まずは自分の契約条件を正確に把握することが、計算の第一歩です。

直販比率は、最終的にどれくらいを目指せばいいですか。

宿によって適正な比率は変わるため、一律の目標値はありません。まずは毎月の数字を記録し、前月と比べて増えているかどうかを見ることが大切です。増えていれば、いま取り組んでいることを続けます。

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