旅館の広告費はいくらが適正か
(自社の実例で解説)

「広告を始めたいけれど、いくらかければいいか分からない」。そんな宿の方に向けた記事です。私たちは長野県高山村で、創業140年の旅館を自ら運営しています。月30万円の広告費でROAS1,200%超を記録した実例をもとに、広告費の決め方と始め方をお伝えします。

創業140年の旅館 旅館の木造の湯小屋|旅館の広告費と広告効果を実例で解説
FIELD — NAGANO / TAKAYAMA  ·  この旅館

結論=広告費は売上から逆算する

先に結論です。旅館の広告費に、一律の「相場」はありません。単価も客室数も繁忙期も、宿によってまったく違うからです。隣の宿の予算をまねしても、あなたの宿の適正額にはなりません。

では何を基準に決めるのか。答えは「売上からの逆算」です。順番は3つだけです。

S.01
広告でつくりたい売上を決める。全体の売上目標ではなく、広告経由でいくら足したいかを決めます。
S.02
ROASの目安を決める。ROASとは、広告費に対して売上がいくら返ったかを示す割合です。
S.03
売上をROASで割って広告費を出す。これがあなたの宿の「適正な広告費」の出発点になります。

計算の例を挙げます。例えば「広告経由で月100万円の売上をつくりたい」とします。ROASの目安を500%(5倍)に置くと、必要な広告費は20万円です(100万円÷5)。※この数字は計算のための仮定です。実際の目安は宿の粗利や客単価によって変わります。

大事なのは金額そのものではありません。「かけたお金がいくらになって返ってきたか」を、いつでも見られる状態にしておくことです。それさえできていれば、広告費は途中で何度でも直せます。

この考え方は、旅館に限った話ではありません。私たちが運営に関わる別の事業では、広告費46万円で月商387万円を達成した例もあります。北海道のホテルでは、1年で売上が約6倍になった例もあります。業種や広告費の額はそれぞれ違っても、「売上から逆算して、ROASで管理する」という型は共通しています。この記事の後半で、その中身も具体的にお伝えします。

旅館の実例(月30万円でROAS1,200%超)

ここからは私たちの実例です。この旅館は長野県高山村にある、創業140年の旅館です。コンサルとして外から助言したのではありません。自社事業として、自らお金を出して運営しています。

月額広告費
30万円
この予算で運用
最高ROAS
1,200%超
広告費の12倍超が売上に
売上・前年同月比
240%
最高月商1,100万円

月額30万円の広告費で、ROASは最高1,200%超を記録しました。広告費の12倍を超える売上が返ってきた計算です。売上は前年同月比240%になり、最高月商は1,100万円に届きました。

ただし正直に書きます。1,200%超はあくまで「最高値」です。毎月この数字が出るわけではありません。それでも数字が育ったのは、次の4つを続けたからだと考えています。

1. 週に一度、ROASを見る

広告は出して終わりにしません。週に一度は必ず数字を確認し、「返ってきているか」を見ます。

見る場所は、Meta広告マネージャの管理画面です。ROASのほかに、CTR(クリック率)とフリークエンシー(同じ人への表示回数)もあわせて見ます。この3つで、広告の健康状態はだいたい分かります。

2. 効く広告に予算を寄せる

反応のよい広告に予算を寄せ、効かない広告は止めます。同じ30万円でも、配分しだいで結果は大きく変わります。

止める基準も、先に決めています。CTR1%未満が2週続いた広告は止める。フリークエンシーが3を超えたら、新しいクリエイティブを足す。基準があると、その場の気分で迷いません。

3. 広告だけに頼らない

SNSの発信を広告と連動させました。この旅館ではSNSの総フォロワーが3万人を超えています。広告で出会った人がSNSでファンになる流れをつくると、広告の効きも上がっていきます。

4. 数字が自動で見える状態をつくる

広告と予約の数字が自動で集まるダッシュボードを整えました。毎日数字が見えるから、判断が早くなります。

少額から始める4つの手順

「まず月30万円が必要」ということではありません。いきなり大きな額をかける必要はないのです。むしろ順番を間違えるほうが、お金を失います。おすすめの手順は4つです。

01
計測を整える。広告から予約完了までを計れる状態を先につくります。ここを飛ばすと、効果が永遠に分かりません。
02
少額でテストする。例えば月5万円など、無理なく続けられる額から始めます(金額はあくまで例です)。
03
週に一度だけ数字を見る。見るのはROASと予約数で十分です。毎日張りつく必要はありません。
04
効いたものに寄せて増やす。返ってきていることを確かめてから、少しずつ広告費を増やします。

ここからは、それぞれの手順を「今日から着手できる」レベルまで具体的に書きます。

手順1:計測の整え方

使うのは、無料の「GA4(Googleアナリティクス)」です。あわせて、広告側の計測タグ(Meta広告ならMetaピクセル)を公式サイトに入れます。

設定のゴールは1つです。予約完了ページへの到達を「キーイベント」にして、「広告を見た人が何人予約したか」を数えられる状態にします。ここまでを、広告を出す前に終わらせます。

手順2:テストの組み方

クリエイティブは、写真ちがいで3〜5本を同時に出します。露天風呂・料理・客室・景色などです。ターゲットは絞りすぎず、地域と年齢くらいにとどめます。

そして最初の2週間は、原則いじりません。配信には学習期間があって、触るたびにリセットされるからです。

手順3:見る数字と判断基準

週1回、見る数字は3つです。ROAS・CTR・予約数。判断基準は、シンプルにしています。

CTRが1%未満なら、写真か文言を差し替えます。CTRが良いのに予約が出ないなら、直すのは広告ではなくサイト側です。ROASが目安を下回る月が2ヶ月続くなら、予算ではなく設計から見直します。

※これらは一般に通用する運用の目安です。宿によって、最適な基準は変わります。

手順4:増やし方

効いていると確かめられたら、予算を増やします。ただし、一気に倍にはしません。2〜3割ずつ増やして、数字が崩れないかを確かめながら進めます。

この手順でいちばん大事なのは、最初の「計測」です。この旅館でも数字が見える状態を先につくったから、安心して予算を増やせました。

私たちの旅館・宿の集客支援では、計測の整備から広告運用までを伴走で行っています。

広告の前後で、数字はこう変わった

「広告費をかけると、実際どれくらい変わるのか」。ここでは、この旅館の数字を前後で並べてお見せします。特別な演出はしていません。実際に追っている数字そのものです。

Before
前年同月の売上。これを100とした場合の基準値です。当時は広告費を今ほどかけていませんでした。
After
広告費月30万円を運用した後。売上は前年同月比240%まで伸び、最高月商は1,100万円に届きました。同じ月の広告のROASは、最高で1,200%超を記録しています。

ここで見てほしいのは、「240%」という比率です。売上が2倍を超えて伸びた背景には、広告費だけでなく、SNSでの発信や予約導線の整備も重なっています。それでも、広告を「出して終わり」にせず、週に一度ROASを確認し、効くものに予算を寄せ続けたことが、土台になっています。

大事なのは、この数字が一度きりの偶然ではないということです。前の章で書いた「計測を整える」「少額でテストする」「週に一度見る」「効いたものに寄せて増やす」という手順を、毎月同じように繰り返した結果です。特別な才能や勘に頼らなくても、手順を踏めば近い結果に近づけます。

業種で変わる広告費の目安(スクール・ホテルの実例)

「旅館だから通用した話では」と思われるかもしれません。そこで、私たちが関わる別の業種の実例も共有します。金額も業態もまったく違いますが、考え方は同じです。

スクール事業:広告費46万円で月商387万円

あるスクール事業では、広告費46万円をかけて月商387万円を達成しました。広告費に対して8倍を超える売上が返ってきた計算です。旅館とは客単価もお客さまの購買行動もまったく違いますが、「週に一度ROASを見て、効く広告に寄せる」という運用の型は変えていません。

北海道のホテル:1年で売上が約6倍に

北海道のホテルでは、1年をかけて売上が約6倍になりました。旅館の実例のような「月30万円で最高ROAS1,200%超」という即効性のある数字ではなく、月ごとに数字を見ながら広告費と施策を積み重ねた結果です。広告は単発で当てるものではなく、継続して育てるものだということが分かる例です。

業種が違っても、決め方は変わらない

金額の大きさも、伸びるまでの期間も、業種によって違います。旅館は繁忙期・閑散期の差が大きく、スクール事業は募集のタイミングに合わせて集中的に出す傾向があります。ホテルのように、時間をかけて積み上げるケースもあります。

それでも、決め方の順番は共通しています。「広告でつくりたい売上を決める」「ROASの目安を決める」「売上をROASで割って広告費を出す」。この3ステップに、業種による違いはありません。あなたの宿の数字に置き換えて、同じ順番で考えてみてください。

私たちの失敗談(先に知れば防げます)

ROAS1,200%超という数字の裏には、失敗もたくさんあります。読者の方が同じ穴に落ちないように、正直に書きます。

学習中の広告を、触りすぎた

成果を早く出したくて、配信中の広告を毎日のようにいじった時期があります。結果は逆でした。触るたびに配信の学習がリセットされて、成果が安定しませんでした。「最初の2週間は待つ」と決めてから、数字は落ち着きました。

作り込んだ1本に、時間をかけすぎた

完璧な1本を目指して、制作に時間をかけたことがあります。出してみたら、素直に撮った写真の広告に負けました。どれが効くかは、出す前には分かりません。早く3〜5本出して、数字に選ばせるほうが近道です。

埋まる時期にも、広告を出し続けた

放っておいても埋まる時期に、広告費を使っていたことがあります。いまは、埋めたい時期に絞って出しています。同じ予算でも、使う時期しだいで価値が変わります。

広告が向かない宿もあります(正直に)

正直に書きます。私たちは、すべての宿に広告をおすすめしているわけではありません。次のような状態の宿は、広告より先にやることがあります。

N.01
予約の受け皿が弱い宿。公式サイトが古い・予約までの導線が分かりにくい状態で広告を出しても、お金が流れて終わります。先にサイトと予約導線を整えるべきです。
N.02
予約完了まで計測できない宿。効いたか効かないかを判断できないまま、広告費だけが出ていきます。計測が先です。
N.03
繁忙期はすでに満室の宿。通年で広告を出す必要はありません。埋めたい閑散期だけに絞るほうが賢い使い方です。
N.04
客単価が低く粗利が薄い宿。広告費負けしやすい構造です。先に単価やプランの設計を見直すほうが効きます。

こうした宿からご相談をいただいたときは、「広告はまだやらないほうがいい」とお伝えしています。遠回りに見えても、それが結局いちばんの近道だからです。

よくある質問

旅館の広告費の相場はいくらですか。

一律の相場はありません。宿によって単価も客室数も違うからです。広告でつくりたい売上とROASの目安から、逆算して決めることをおすすめします。

広告費はいくらから始められますか。

少額から始められます。先に計測を整えてから、無理なく続けられる額でテストするのが安全です。数字を見て効くものに寄せながら、少しずつ増やしていきます。

どの広告媒体から始めればよいですか。

宿ならMeta広告(Instagram・Facebook)からをおすすめします。宿は写真で選ばれるので、相性が良いからです。宿名で検索される数が多いなら、Google検索広告も候補になります。

広告の効果はいつから判断できますか。

最初の2週間は学習期間と考えて、いじらずに待ちます。判断はそのあとです。月単位でROASを見て、2ヶ月続けて悪ければ設計から見直します。

ROASとは何ですか。

広告費に対して売上がいくら返ったかを示す割合です。例えば広告費10万円で売上100万円なら、ROASは1,000%です(この数字は計算のための仮定の例です)。

広告費を増やすタイミングは、どう判断すればいいですか。

効いていることを数字で確かめてから、2〜3割ずつ増やすことをおすすめします。一気に倍額へ増やすと、何が効いたのか分からなくなります。少しずつ増やして、ROASが崩れないかを確かめながら進めるのが安全です。

旅館以外の業種でも、同じ考え方は使えますか。

使えます。私たちが関わるスクール事業では広告費46万円で月商387万円、北海道のホテルでは1年で売上が約6倍になった例があります。業種によって金額や期間は変わりますが、「売上から逆算してROASで管理する」という決め方は共通しています。

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