東洋思想を経営に持ち込むということ
円融自在という組織のかたち

組織の一体感に、悩んだことはありませんか。誰かに合わせて自分を消すのでも、自分だけを押し通すのでもない。私たちOne Ismは、そうした調和のかたちを、東洋思想の言葉を借りて「円融自在」と呼んでいます。都心と地方、人とAI、新旧の知恵を溶け合わせる考え方が、4本柱のビジョンや採用基準、実際の数字にどう表れているかを、具体的にお伝えします。

東洋思想を経営に取り入れた組織運営のイメージ
PHILOSOPHY — 東洋思想 × 組織運営

先に結論。円融自在を組織にどう落とし込んでいるか

結論から先にお伝えします。私たちが組織運営で大事にしていることは、主に5つです。

1
「合わせる」でも「押し通す」でもない前提を共有する。誰か一人の色に染めるのではなく、それぞれの得意を活かしたまま、全体としてひとつの方向を向きます。
2
意思決定の場では、まず持ち寄る。結論を急ぐ前に、関わる人それぞれの視点を出し合う時間を先に置きます。
3
対立を消そうとしない。意見の違いは、調和を壊すものではなく、調和をつくる材料として扱います。
4
「至誠にして動かざる者は、未だこれあらざるなり」を判断の軸に置く。誠実さを欠いた決定は、長くは続かないと考えています。
5
採用基準を「志・至誠・円融自在」の3つに絞る。理念に共感するかどうかを、入口の時点で確認します。

ここから先は、なぜ東洋思想を経営の軸に選んだのか、「円融自在」が具体的にどういう状態を指すのか、そして自社の4本柱ビジョンや実際の数字にどうつながっているのかを、順にお伝えします。

なぜ東洋思想を経営に取り入れたか

経営の教科書には、効率化やスピードを説くものが数多くあります。私たちも、そうした型を否定するつもりはありません。

ただ、組織を続けていくなかで、効率だけでは説明できない壁に何度もぶつかりました。数字は合っているのに、現場の空気が重い。仕組みは整っているのに、人が定着しない。そうした場面です。

そのとき立ち返ったのが、東洋思想でした。至誠・志・調和という言葉は、もともと私たちの価値観の軸にあったものです。西洋的な経営理論を否定するのではなく、その土台に東洋思想を置くことで、判断がぶれにくくなると感じています。

「至誠にして動かざる者は、未だこれあらざるなり」という言葉を、私たちは大切にしています。誠実に尽くして、人や物事が動かなかったことはない、という意味です。数字を追う前に、誠実であるかどうかを問う。この順番を、経営の軸にしています。

株式会社One Ismは、2023年7月に設立しました。資本金は100万円、代表は大橋祐哉です。小さな会社だからこそ、理念を経営の隅々まで行き渡らせやすいと考えています。

私たち自身、地方の山あいで、創業140年になる小さな宿の経営にも関わっています。都心で培ったマーケティングやデータ活用のノウハウと、地方の現場で受け継がれてきたもてなしの知恵を、同じ組織のなかで両立させる。東洋思想を軸にした運営を実際に試しているのも、この考え方を机上で終わらせたくないからです。

「円融自在」とは具体的にどういう状態か

円融自在は、仏教に由来する言葉です。私たちは、特定の信仰を勧める意味で使っているのではありません。ひとつの「状態」を表す言葉として、借りて使っています。

たとえるなら、山の姿に近いと考えています。山には、いろんな木や草花があります。それぞれが、自分のかたちのまま伸びています。

木は木のまま、草は草のまま。誰かが誰かに似せる必要はありません。それでいて、遠くから見れば、ひとつの緑の山になっています。

組織も同じだと考えています。それぞれが得意なことを、自分のかたちのまま伸ばす。誰か一人に合わせて、自分を消す必要はありません。

同時に、自分だけを押し通して、全体を乱してもいけません。個であることと、全体であることが、同時に成り立っている状態。それが、私たちの考える円融自在です。

私たちの場合、この考え方は主に3つの組み合わせに表れています。

都心と地方を溶け合わせる

都心で培った広告運用やデータ分析のノウハウを、地方の現場にそのまま持ち込んでも、うまくいきません。土地の事情や、お客さまの層が違うからです。

私たちは、都心のノウハウを「型」として持ち込みつつ、実際に地方の現場(自社で運営する旅館)で試し、修正したものだけを他の案件に展開しています。都心の効率と、地方の実情。どちらか一方に寄せるのではなく、両方を行き来しながらすり合わせています。

人とAIを溶け合わせる

私たちの組織では、AIエージェントが実務の一部を担っています。データの集計、下書きの作成、定型的な確認作業など、繰り返しが多い仕事です。

最終的な判断や、お客さまとの関係づくりは、人が担います。人にしかできないことと、AIが得意なことを分ける。どちらかに寄せきらず、それぞれの持ち味を活かしたまま同じ組織で動かす。これも円融自在の実践だと考えています。

新旧の知恵を溶け合わせる

自社で運営する旅館は、創業140年になります。長く受け継がれてきたもてなしの作法や、地域との関係は、簡単には真似できない財産です。

その一方で、集客の判断には、GA4やSearch Consoleといった新しいデータツールを使っています。古い知恵を守るために、新しい道具を使わないのではなく、古い知恵を活かすために、新しい道具を積極的に取り入れる。この組み合わせも、円融自在のひとつのかたちです。

4本柱ビジョンは円融自在の実践そのもの

円融自在という考え方は、抽象的な理念で終わらせず、私たちの事業の進め方そのものに落とし込んでいます。その骨格が、4本柱のビジョンです。

1
自社で旅館を運営する。理念を机上の空論にしないため、まず自分たちの手で、実際の経営に取り組みます。
2
その型を、他の宿へ広げる。自社で実証できたやり方だけを、他の案件の支援に使います。
3
地方の若者に、挑戦の場をつくる。学び働ける場を地方につくることで、都心に出なくても挑戦できる選択肢を増やします。
4
宿から、地域全体へ広げる。1軒の宿の再生で終わらせず、その効果を地域全体に波及させることを目指します。

この4段階は、個から全体へと広がっていく流れです。まず自社という「個」で試し、それを他の宿という「個」へ広げ、最後に地域という「全体」に還元する。円融自在という言葉が説明する、個であることと全体であることが同時に成り立つ状態を、事業の設計そのものに反映させたものです。

数字で見る、円融自在が生んだ成果

理念だけでは、経営は続きません。ここでは、この考え方で実際に運営している事業の数字をお伝えします。

自社で運営する旅館の実績

都心のマーケティングノウハウと地方の現場、そして人とAIの両方を組み合わせて運営した結果、売上は前年同月比240%まで伸びました。最高月商は1,100万円です。

広告面では、月額広告費30万円で、最高ROAS1,200%超を達成しています。SNSの総フォロワー数は3万人を超えました。都心的な運用の型を、地方の現場にそのまま当てはめるのではなく、実情に合わせてすり合わせてきた結果だと考えています。

他の案件でも、同じ考え方で成果が出ている

この型は、自社だけにとどまりません。あるスクール事業では、広告費46万円で月商387万円を達成しました。北海道のホテルでは、1年で売上が約6倍に伸びています。

どちらも、都心のノウハウを一方的に押しつけるのではなく、現場の実情に合わせて調整しながら実行した結果です。円融自在という考え方は、精神論だけでなく、数字にも表れると考えています。

自社サイトのデータでも、新旧の知恵の融合を実践している

私たちは自社サイトでも、GA4とSearch Consoleを使って、伝統的な経営判断と最新のデータ分析を組み合わせています。直近28日間の実データでは、アクティブユーザー2,031人・新規ユーザー1,961人、検索経由の流入が全体の約57%を占めています。Search Consoleでは、検索クリック568・表示回数6,023・平均クリック率9.43%・平均掲載順位9.92という数字が出ています。理念を語るだけでなく、日々の数字も自分たちで見る。これも、私たちが実践している円融自在のひとつです。

組織運営にどう反映されているか

役割は「型にはめる」のではなく「伸ばす」

新しく仲間が加わったとき、最初に既存のやり方に合わせさせることはしません。まず、その人が得意なことや、大事にしている考え方を聞きます。役割は、そこから逆算してつくります。

全員が同じ手順で仕事をする必要はないと考えています。得意なやり方が違えば、成果までの道筋が違っても構いません。そろえるのは、向かう方向だけです。

意思決定は、持ち寄ってから決める

重要な判断をするとき、最初から一つの案に絞り込むことはしません。関わる人それぞれの視点を、先に出し合う時間を置きます。

意見が割れたときも、多数決で急いで決めることはしません。なぜその意見なのかを聞き合う時間を、あえて挟みます。時間はかかりますが、そのぶん決めたあとのブレが少なくなると感じています。

対立は、消すのではなく生かす

意見のぶつかり合いを、悪いことだとは考えていません。むしろ、誰も違う意見を言わない状態のほうが、危ういと感じています。

大切なのは、対立したあとに、どちらかが折れて終わらせないことです。両方の意見の背景にある理由を確認し、そのうえで、全体にとって誠実な選択は何かを問い直します。

数字だけでなく、誠実さを判断基準に置く

施策や成果物を世に出す前に、数字の見込みだけでなく、誠実さに欠けていないかを確認する場面を、判断の節目に置いています。

短期的には効率が良く見えても、誠実さを欠いた判断は、長い目で見ると組織の調和を壊すと考えているからです。

採用基準「志・至誠・円融自在」の中身

私たちの採用基準は、「志」「至誠」「円融自在」の3つに絞っています。スキルや経験より先に、この3つを確認します。

志(こころざし)— 何のために働くか

地方の再興や、旅館・宿の再生という目的に、共感しているかどうかを見ます。条件面だけで選んでいないか、面接の中で率直に聞きます。目的への共感がないまま加わると、判断に迷ったときに立ち返る軸を持てないからです。

至誠(しせい)— 誠実であるか

言ったことをやる、うまくいかなかったことを隠さない。この2点を重視しています。実務の中で、報告が遅れる・都合の悪い情報を後回しにする、といった兆候がないかを、日々の仕事ぶりで確認しています。

円融自在 — 自分を保ちながら、全体と調和できるか

自分の得意なやり方を持ちながら、全体の方向とずれたときに、押し通すのではなく、話し合いに応じられるか。逆に、周りに合わせすぎて自分の意見を消していないか。両方の兆候を見ています。

この3つの基準は、入口の面接だけでなく、日々の仕事ぶりを見るときの判断軸としても使っています。採用基準を見直す際は、スキル面の基準とは別に、こうした人格面の基準を1つか2つ、あらかじめ言葉にしておくことをおすすめします。

理念を経営に取り入れるときのつまずきやすい3つの落とし穴

理念を経営に取り入れようとして、私たちも含めて多くの会社がつまずくポイントがあります。ここでは代表的な3つと、その対処法をお伝えします。

1
理念がスローガンで終わり、運用ルールに落ちていない。「調和を大切に」と掲げるだけでは、日々の判断には使えません。私たちは、採用基準・意思決定の進め方・評価の場面など、具体的な運用ルールに1つずつ落とし込むようにしています。理念を掲げたら、次の1週間で「どの業務ルールに反映するか」を1つ決める。それだけでも、額縁で終わらせずに済みます。
2
「調和」を「対立を避けること」と誤解してしまう。意見の違いを避け続けると、誰も本音を言わなくなります。私たちは、対立そのものを問題視せず、対立したあとにどちらの理由が全体にとって誠実かを問い直す、という順番を徹底しています。会議で意見が割れたら、多数決で急がず、双方の理由を最後まで聞く時間を先に取ってください。
3
経営者だけが理念を理解していて、現場の判断基準になっていない。理念が経営者の頭の中だけにあると、現場は結局、効率や前例で判断してしまいます。私たちは、判断に迷ったときに立ち返る合言葉を1つだけ決め(私たちの場合は「至誠にして動かざる者は、未だこれあらざるなり」です)、それを繰り返し口にするようにしています。1つに絞ることが、覚えてもらう近道です。

よくある質問

円融自在とは、どういう意味ですか。

円融自在は、仏教に由来する言葉です。私たちは、特定の信仰を勧める意味では使っていません。それぞれが自分のかたちのまま伸びながら、全体としてひとつにまとまっている状態を表す言葉として使っています。私たちの場合は、都心と地方、人とAI、新旧の知恵という3つの組み合わせに、この考え方が表れています。

なぜ経営に東洋思想を取り入れたのですか。

効率やスピードだけでは説明できない壁に、何度もぶつかったからです。数字が合っていても、現場の空気が重くなる場面がありました。誠実さを判断の軸に置くことで、ぶれにくい経営になると考えています。

円融自在は、具体的な数字の成果につながっていますか。

はい。私たちが同じ考え方で運営している、自社で運営する旅館では、売上が前年同月比240%、最高月商1,100万円、広告の最高ROASは1,200%超(月額広告費30万円)という実績が出ています。理念だけで終わらせず、数字でも確認しながら運用しています。

AIと人が同じ組織にいることも、円融自在の実践ですか。

そう考えています。私たちの組織では、AIエージェントが繰り返しの多い実務を担い、人が最終判断や現場対応を担っています。どちらかに寄せきらず、それぞれの持ち味を活かしたまま同じ組織で動かすことも、円融自在のひとつのかたちだと考えています。

調和と言っても、意見がぶつかることはありますか。

はい、あります。私たちは、対立を悪いことだとは考えていません。誰も違う意見を言わない状態のほうが、むしろ危ういと感じています。対立したあと、誠実な選択は何かを問い直すことを大切にしています。

具体的にどんな場面で反映されていますか。

役割の任せ方、意思決定の進め方、そして採用基準「志・至誠・円融自在」に反映しています。全員を同じ型にはめるのではなく、それぞれの得意を活かしたまま、判断の節目で誠実さを確認するようにしています。

東洋思想を取り入れると、意思決定は遅くなりませんか。

一つひとつの判断に、時間をかける場面はあります。ただ、決めたあとのブレが少なくなるため、長い目で見るとやり直しが減ると感じています。

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