会社が大きくなるほど、理念は言葉だけになりやすいと感じています。私たちOne Ismには、日々の意思決定や施策が理念からズレていないかを、AIに確認させる仕組みがあります。「志」「至誠」「円融自在」という価値観を具体的な問いに変え、人の気合いではなく仕組みでブレを見つけるという話です。
結論から先にお伝えします。私たちが理念のブレを防ぐためにやっていることは、主に4つです。
ここから先は、なぜこの仕組みが必要だったか、そして中身をどう作ったかを、実際の運用に沿ってお伝えします。
会社を立ち上げたときの理念は、たいてい強い言葉でできています。私たちの場合は「地方から、日本を再興する」というミッションです。2023年7月、資本金100万円で設立したばかりのころは、この言葉を毎日のように意識していました。
このミッションは、4つの柱で考えています。①自社で旅館を運営する、②その型を他の宿へ広げる、③地方の若者に挑戦の場をつくる、④宿から地域全体へ広げる、という順番です。理念は言葉だけでなく、いま自分たちがこの順番のどこに取り組んでいるかを示す地図でもあります。
ただ、仕事が増え、案件が増え、日々の意思決定の数が増えるほど、理念を意識する時間は減っていきます。目の前の締切や数字を優先するのは、自然なことです。誰か一人の怠慢ではなく、忙しさが理念を後回しにさせるのだと感じています。
さらに厄介なのは、理念からズレた判断ほど、その場では「効率がいい」「早い」と感じられることです。短期的には正しく見えるので、気づかないまま積み重なっていきます。
人間だけでこれを防ごうとすると、誰かが毎回「これは理念に沿っているか」と問い続ける必要があります。忙しい現場で、それを毎回言い出すのは、簡単なことではありません。だからこそ、その役割を仕組みに任せることにしました。
やっていることは、特別なシステムではありません。「何を」「いつ」「どう」の3点を決めて、それを繰り返しているだけです。まず「何を」確認するかを、具体的な問いにして持っています。
私たちの採用基準でもある「志」「至誠」「円融自在」という3つの価値観を軸に、公益性と弱い立場の人への配慮を加えて、次の5つの問いに翻訳しています。
大事なのは、AIが「正解」を出すわけではないということです。AIが出すのは、あくまで気づきのきっかけです。判断するのは、いつも人間です。
具体的な案件の中身には触れられませんが、一般化した形で、実際に見つかった例を3つ紹介します。
早く形にしたいという気持ちから、現場の実情を確認せずに机上だけで施策を進めそうになったことがあります。この時、「円融自在に沿っているか」という問いから、AIが「実際の現場で確かめたのか」と指摘しました。結果として、一度立ち止まり、確認してから進める判断に変わりました。
成果を伝える文章で、事実より大きく見せたい気持ちが働くことは、誰にでもあります。「至誠に沿っているか」という問いから、AIが指摘し、事実に基づいた表現に直したことがあります。
契約や取り決めの条件を決める場面で、こちらの都合を優先した一方的な条件のまま進めそうになったことがあります。「弱い立場の人に逃げ道があるか」という問いから、AIが相手側の逃げ道や相談できる余地を確認するよう指摘し、条件を見直したことがあります。
どの例も、担当者が悪意を持っていたわけではありません。忙しさや、良かれと思った判断の中で、少しずつ理念からズレていく。そのズレを、早い段階で見つけられることに、この仕組みの意味があると感じています。
この仕組みを運用する中で、私たち自身もつまずいた・気をつけている3つのパターンがあります。
ここまでの内容を、実際に自分の会社で試すとしたら、次の3ステップで始められます。
この3ステップを回すだけでも、理念が言葉だけで終わることを防げます。
こうした話をすると、大企業のガバナンス部門のような、大がかりな仕組みを想像されるかもしれません。ですが、私たちのように2023年7月設立、資本金100万円というごく小さな会社でも、これは無理なく導入できています。
理由は3つあります。1つ目は、専任の部署や高価なシステムが要らないことです。理念を言葉にし、確認する節目を決めるだけで始められます。
2つ目は、AIは疲れず、忘れず、忖度もしないことです。人間同士だと、立場や関係性から指摘しづらい場面があります。AIはその点で、機械的に同じ基準を当て続けられます。
3つ目は、むしろ少人数の会社ほど、この仕組みの価値が大きいことです。人数が少ないほど、一人の判断がそのまま会社の判断になります。理念からのズレが、すぐに外へ出てしまう規模だからこそ、早い段階で気づく仕組みが要ると考えています。
施策や重要な意思決定が、会社の理念や価値観に沿っているかどうかです。私たちの場合は「志」「至誠」「円融自在」という3つの価値観と、公益性・弱い立場の人への配慮まで含めた具体的な問いに翻訳して確認させています。数字の良し悪しではなく、理念との整合を機械的に問う役割です。
「志に沿っているか」「至誠に沿っているか」「円融自在に沿っているか」「公益性があるか」「弱い立場の人に逃げ道があるか」という5つの問いにしています。抽象的な言葉のままだと確認できないので、判断の場面で使える具体的な問いの形に落とし込むことを大事にしています。
人間だけだと、忙しさに流されて理念の確認を後回しにしがちです。AIを判断の間に挟むことで、その確認を必ず行う仕組みにしています。
あります。基準があいまいなままだと、AIの指摘も的外れになりやすいです。だからこそ、抽象的な言葉を具体的な問いまで落とし込むことを重視しています。それでも指摘はあくまで参考で、最終判断は人間が行います。
いいえ、従いません。最終判断は、いつも人間が行います。AIの役割は、気づく機会をつくることです。
大がかりなシステムは必要ありません。理念とチェックの基準を言葉にし、判断の節目でAIに確認させる手順を決めるだけです。
はい。私たちは2023年7月設立、資本金100万円という小さな会社ですが、無理なく導入し運用しています。人数の多さよりも、理念を具体的な言葉にできているかどうかが大切です。