数字の可視化を検討しているけれど、外注の見積もりを見て悩んでいる。そんな経営者へ向けて書いています。私たちは、自社の数字を見るダッシュボードを、外注せずに内製しました。判断した理由と、内製したからこそ得られたこと、そして正直なデメリットをお伝えします。
結論から先にお伝えします。私たちは、自社の数字を見るダッシュボードを、外注せずに内製しました。広告費・LINEの配信状況・予約の数字を1つの画面にまとめて、毎日でも確認できる状態を作っています。理由は主に3つです。
ただ、内製はいいことばかりではありません。ここから先は、外注と内製のあいだで悩んだ経緯、実際の作り方、つまずいた点、内製したからこそ見えたデメリットまで、正直に書きます。
私たちは、地方の再興とAIマーケティングの支援を仕事にしています。事業の柱の一つに、データ基盤・ダッシュボード構築があります。クライアントの数字を見える化する仕事を、日々やっている立場です。
その私たちが、自社の数字を可視化しようとしたとき、最初に考えたのは「外の専門会社に頼むか、自分たちで作るか」でした。世の中には、ダッシュボード構築を専門にする会社や、既製のBIツールがいくつもあります。まずは、それらを検討しました。
外注の見積もりを見て、まず感じたのは金額でした。要件定義から本番稼働まで頼むと、数十万円から数百万円かかる案件も珍しくありません。加えて、見たい数字を後から足したいとき、追加費用がかかる契約も多くありました。
既製のBIツールも検討しました。月額の利用料自体は抑えられますが、自社の広告データやLINEの数字、宿泊データのように、複数の場所に散らばった数字をつなげる部分は、結局どこかで作り込みが必要でした。
私たちが数字を見たいと思った直接のきっかけは、自社で運営する旅館の急成長でした。前年同月比240%、最高月商1,100万円という伸びの中では、広告のどこが効いているかを翌日には把握して、次の判断に反映する必要がありました。月1回の外注レポートを待っていては、判断が数字の変化に追いつきません。ここが、内製を本気で検討し始めた分岐点です。
悩んだ末に、私たちは内製を選びました。理由をもう少し具体的に書きます。
もう一つ、社内に「作れる体制」がすでにあったことも大きな理由です。ゼロから体制を作る必要があったなら、判断は変わっていたかもしれません。この点は、正直にお伝えしておきます。
私たちのビジョンは、自社で旅館を運営し、そこで確立した型を他の宿へ広げていくことです。ダッシュボードも、1つの案件のために作って終わりの道具ではありません。1つの案件で仕組みを作れば、次の案件にはほぼそのまま複製して使えます。この複製のしやすさは、外注では得にくい、内製ならではの利点だと考えています。
内製と言うと、専用のエンジニアを何人も抱えているように思われるかもしれません。実際はそうではなく、無料で使えるツールを何個か組み合わせているだけです。仕組みの骨格をお伝えします。
広告費・LINEの配信数・予約件数といった数字は、決まった時間に自動で取得して、Googleスプレッドシートに1行ずつ書き足していきます。スプレッドシートを、すべての数字の「正本」として扱います。特別なデータベースは用意していません。
スプレッドシートに、Google Apps Script(GAS)というプログラムをひも付けます。GASのdoGetという機能を使うと、スプレッドシートの中身をJSON形式で返す簡易的なWebサーバーを、無料で立てられます。ダッシュボードの画面側は、このURLに定期的にアクセスして、返ってきた数字をグラフや表として描画するだけです。
ただし、GASの応答は無料の仕組みゆえに、まれに遅延やタイムアウトが起きます。そこで、直近に取得できた正常なデータをdata.jsonという静的ファイルとしてダッシュボード側にも保存しておき、GASの応答が失敗した時はこのファイルを代わりに表示する仕組みを入れています。これがあることで、GAS側に不具合が起きても、画面が真っ白になったり、古いエラーのまま固まったりすることを防げます。
この仕組みで使っているスプレッドシート・GAS・グラフ描画のライブラリは、いずれも無料の範囲で収まります。追加でかかる費用はほとんどなく、あるとすれば画面を公開するホスティング代くらいです。かかるのは、仕組みを組む人の工数だけです。
仕組みの説明だけでは、何が変わったか伝わりにくいと思います。実際にあった変化を、Before/Afterで書きます。
ダッシュボードを作る前は、広告の数字は広告管理画面、LINEの数字は配信ツールの管理画面、予約の数字は予約台帳と、見る場所がそれぞれ違いました。状況を把握するには、毎回すべての画面を開いて、手元でメモしたり転記したりする必要がありました。判断のたびにこの作業が挟まるので、気づきが遅れることがありました。
ダッシュボードを作ってからは、広告費・LINEの反応・予約件数を1つの画面で見られるようになりました。自社で運営する旅館では、月額広告費30万円で最高ROAS1,200%超を記録した月がありましたが、この数字がダッシュボードにすぐ反映されたことで、翌週の広告予算の判断を即日で行えました。スクール事業では、広告費46万円で月商387万円を達成した際も、どの広告経由の成約が伸びているかをダッシュボードのCV内訳ですぐに特定できました。支援している北海道のホテルでは、1年で売上が約6倍になりましたが、この伸びを週次で追い続けられたのも、数字を1画面にまとめていたからです。
数字を見る場所が1つになると、変化に気づくまでの時間が短くなります。判断のスピードは、そのまま打ち手の早さに直結します。
内製の過程では、何度かつまずきました。同じところで悩む方が減るように、具体的に共有します。
ここまで、内製の良い面と実際の作り方を中心に書きました。ただ、内製にはデメリットもあります。
専門会社が作るダッシュボードは、見た目の作り込みや操作性が洗練されていることが多いです。内製は、そこにかける時間を数字の中身に回す分、見た目はシンプルになりがちです。
内製したダッシュボードは、作った人がいなくなると止まってしまうリスクがあります。外注であれば、契約している会社に依頼すれば直りますが、内製では社内の誰かがその役割を持ち続ける必要があります。前章で書いたようなアクセス権エラーや重複計上も、仕組みを理解している人がいなければ気づかないまま、数字がずれ続けてしまいます。
作り始めた当初は、想定より時間がかかりました。データの場所がばらばらだったり、集計のルールが決まっていなかったり。ダッシュボード自体より、その手前の整理に時間を使うことになります。
内製してみて、今の私たちなら、次のように判断すると思います。
社内に、仕様を理解して直し続けられる体制があるなら、内製は有力な選択肢です。コストとスピードで、外注より優位になりやすいからです。
逆に、社内に直せる人がおらず、これから体制を作る余裕もないなら、無理に内製へ寄せる必要はないと考えます。外注のほうが、結果的に早く安定することもあります。
大切なのは、外注か内製かを先に決めることではなく、自社の体制と、見たい数字の変わりやすさを先に見ておくことだと思います。私たちの場合は、その両方が内製に向いていました。判断に迷う時は、次の4点を確認してみてください。
案件によって幅がありますが、要件定義から本番稼働まで頼むと、数十万円から数百万円かかることも珍しくありません。加えて、改修のたびに追加費用がかかる契約も多いです。まず見積もりの範囲を確認することをおすすめします。
どちらが正しいというものではありません。社内に触れる人がいるか、仕様が固まっているか、スピードを優先したいかで変わります。私たちは内製を選びましたが、状況によっては外注のほうが合う会社もあると思います。
専任のエンジニアがいなくても、内製そのものは可能です。ただ、誰かが仕様を理解し、直せる状態を保ち続ける必要はあります。ここが崩れると、外注していた時より扱いにくいものになりかねません。
見た目の作り込みでは、専門会社に劣る部分もあると思います。ただ、自社の運用に合わせて直し続けられる点は、内製ならではの強みです。優劣というより、向いている場面が違います。
日次〜週次で数字を確認する用途であれば、十分に対応できています。秒単位でリアルタイム更新するような使い方には向いていませんが、経営判断に使う頻度であれば無料の範囲で問題なく回せています。
はい、可能です。すでにあるスプレッドシートをそのまま「正本」のデータとして使い、そこにGASをひも付けて画面を作る形であれば、今の運用を大きく変えずに移行できます。
はい、承っています。内製をすすめるための相談ではなく、状況を伺ったうえで、内製と外注のどちらが合っているかも含めてお話しします。まずは現状をお聞かせください。