広告費・予約数・売上を、毎朝ひらけばひと目で分かる状態にしたい。ただ、高額なBIツールを入れる予算はない。そう感じている中小企業の経営者へ向けて書いています。私たちは、Googleが無料で提供している自動化ツール「GAS」だけを使って、この見える化を作りました。何を・なぜ・どうやって作ったかを、実例としてお伝えします。
結論を先にお伝えします。高額なBIツールを入れなくても、広告と予約の見える化はできます。
ここから先は、なぜ高額なツールを使わなかったか、どうやって作ったかを、順番にお伝えします。
広告費・予約数・売上を見える化するツールは、世の中にたくさんあります。ただ、その多くは、月額数万円からのBIツールや、専用の分析サービスです。
地方の小さな会社にとって、月額数万円は軽くありません。売上が不安定な時期ほど、固定費は増やしたくないものです。
私たちも、同じ立場でした。私たちが運営する旅館は、全9室の小さな宿です。高額なツールを入れる前に、まず「本当に必要な機能は何か」を考えました。
必要だったのは、複雑な分析機能ではありません。広告費・予約数・売上という数字を、毎朝ひらけば見える状態にすることだけでした。それなら、無料のGoogle Apps Script(GAS)で十分だと判断しました。
もうひとつ理由があります。専用のBIツールを入れると、そのツールの操作を新しく覚える必要があります。私たちが選んだGASは、すでに使っているGoogleスプレッドシートの延長線上にあるツールです。新しい画面を覚える負担がなく、経理も現場も、いつも見ているスプレッドシートを開くだけで数字を確認できます。道具を増やさないことも、続けるための条件だと考えました。
ここからは、実際の仕組みを具体的にお伝えします。専門用語がいくつか出てきますが、考え方はシンプルです。「その場で計算して返す仕組み」と「毎朝の結果を保存しておく仕組み」の、2つを組み合わせているだけです。
土台になるのは、1枚のGoogleスプレッドシートです。「日付・広告費・表示回数・クリック数・予約数・売上」といった列を用意します。すでに広告管理画面や予約台帳で数字を管理している会社であれば、この列構成は大きくは変わりません。
このスプレッドシートに、GAS(Google Apps Script)のプログラムを1本ひもづけます。GASは、Googleスプレッドシートの拡張機能から無料で使える、自動化のためのプログラム実行環境です。プログラミングの知識がなくても、Googleが用意している関数(広告APIを呼び出す、シートに書き込む、など)を組み合わせるだけで、ある程度のことができます。
GASには、doGetという特別な関数があります。これを書いておくと、そのGASプロジェクトに専用のURL(Webアプリとしての公開URL)が発行され、そのURLにアクセスするたびに、doGetの中身が実行される仕組みになります。
私たちは、このdoGetの中に「スプレッドシートの数字を読み取って、JSON形式(プログラムが読み書きしやすいデータの形)に整えて返す」処理を書きました。つまりdoGetは、ダッシュボード側から見た「一次データの窓口」です。誰かがダッシュボード画面を開くと、裏側でこのURLが呼ばれ、その時点のスプレッドシートの最新の数字がそのまま返ってきます。
doGetだけに頼る運用には、弱点があります。GASのWebアプリ機能は、無料である代わりに、一定時間内に呼び出せる回数や、1回の処理にかけられる時間(実行時間)に制限があります。アクセスが重なったり、スプレッドシートの行数が多くなってくると、doGetの応答が遅くなったり、一時的にエラーが返ってくることがあります。
そこで私たちは、同じGASプロジェクトに、毎朝決まった時刻に自動で動く処理をもう1つ用意しました。この処理は、その日の集計結果をdata.jsonという静的なファイルに書き出して保存します。ダッシュボード側は、まずdoGetにアクセスしにいき、もし応答がない・エラーが返ってきた場合は、このdata.jsonを代わりに読みにいく「フォールバック」構成にしています。
この二段構えにしておくと、doGet側で何か不具合が起きても、少なくとも前日の朝時点までの数字は必ず表示され続けます。「今日の数字が1分単位で最新かどうか」より、「毎朝開いた時に、必ず数字が出ている」ことのほうが、日々の経営判断には重要だと考え、この構成にしました。
ここまでの仕組みを、実際に作る手順に分解するとこうなります。専門知識がなくても、全体の流れとして知っておくと、外部に依頼する時にも話が通じやすくなります。
ここまでできれば、あとは毎朝スプレッドシートかダッシュボード画面を開くだけです。次の章では、実際にこの手順で作る時につまずきやすいポイントを共有します。
無料で作れるとはいえ、GASでの自動集計は、いくつか典型的なつまずきポイントがあります。私たちが実際に遭遇した・気をつけている3つを共有します。
見える化を続けた結果、私たちが運営する旅館では、次の数字を毎朝確認できるようになりました。
これらの数字は、特別な分析ツールで出したものではありません。毎朝自動で集めたデータを、ただ並べて見ているだけです。数字が見える状態を続けたことが、判断の材料になりました。
Before:広告費は広告管理画面、予約数は予約台帳、売上は別のシートと、見る場所がばらばらでした。月末に経理が3つを突き合わせて、ようやく先月の実績が分かる状態でした。広告費を増やす・減らすの判断も、翌月に持ち越すことが多くありました。
After:毎朝スプレッドシートを開くと、前日までの広告費・予約数・売上が1行にまとまって並んでいます。前年同月比240%、最高月商1,100万円、最高ROAS1,200%超(月額広告費30万円)といった数字は、この「毎朝1行が積み上がる」仕組みを続けた結果として見えてきたものです。突き合わせの作業自体がなくなり、見るだけで済むようになりました。
見える化する前は、「なんとなく最近予約が伸びている気がする」といった感覚で、判断していた部分がありました。感覚は、外れることもあります。
いまは、広告費と予約数を並べて見比べられます。増えているのか、減っているのか。数字を見てから判断できるようになりました。
以前は、月末にならないと数字がまとまらず、判断が翌月にずれ込むことがありました。毎朝数字が並ぶようになってからは、変化に早く気づけます。
広告費を増やすか減らすか。予約が少ない週に何を打つか。判断までの時間が、明らかに短くなりました。
見える化は、数字を動かす魔法ではありません。見えるようになった数字をもとに、実際に手を打たなければ、何も変わりません。
それでも、見える状態を続けたことは、私たちにとって次の一手を考える土台になりました。無料ツールでも、続ければ意味のある仕組みになると感じています。
ある程度の設定は必要です。ただ、ゼロから開発するわけではありません。すでにあるスプレッドシートを土台に、自動で数字を集める部分だけを組み立てます。難しい部分は、私たちが代わりに構築することもできます。
まずはdoGetだけでも動きます。ただ、私たちは両方セットで作ることをおすすめしています。doGetだけの場合、GAS側で一時的な不具合が起きると、数字が表示されない時間ができてしまいます。data.jsonという控えを毎朝作っておけば、doGetが詰まっても、少なくとも前日までの数字は必ず見られる状態を保てます。
高度な分析や、大量データの処理が必要な場合は、専用ツールが向いていることもあります。ただ、広告費・予約数・売上を毎朝見る、という目的だけなら、無料のGASで十分足りると私たちは考えています。
その症状は、記事内でも触れた「同じ日のデータを重複して追記してしまう」二重計上である可能性が高いです。トリガーが二重に設定されていないか、追記処理に重複チェックが入っているかをまず確認してください。原因のほとんどは、この2つのどちらかです。
はい、使えます。仕組みの考え方は同じです。毎朝取得したいデータがあれば、スプレッドシートに並べる項目を増やすだけです。在庫・問い合わせ件数など、他の数字にも応用できます。
はい、ご相談いただけます。業種や、いま使っているツールによって、取得できるデータの形は変わります。まずは現状の数字の管理方法をお聞かせください。
データの取得元によって変わります。スプレッドシートで数字を管理している会社であれば、比較的早く形にできます。まずは現状を確認させてください。
広告費・予約数・売上の見える化について、ご相談を承っています。無料ツールでどこまでできるか、まず現状をお聞かせください。データ基盤・ダッシュボード構築のくわしい説明は「サービス紹介」のページをご覧ください。
ご相談は無料です。1営業日以内にご返信します。無理な営業はしません。