旅館・ホテルの閑散期対策(値引きの前に、公式LINEの予告と平日に絞った広告で先に埋める順番)
閑散期の空室を、どう埋めればいいか。多くの宿が、まず値引きから考えます。ですが私たちは、値引きから入りません。先にやるのは、すでに宿を知っている方への公式LINEの予告です。次が、まだ宿を知らない近くに住む方への広告です。長野と北海道で私たちが運営・支援している宿は、この順番で閑散期を埋めています。
閑散期は値引きから入らず、公式LINEの予告と平日に絞った広告で先に埋める
閑散期に空室が並ぶと、つい値段を下げたくなります。ですが、値下げから入ると宿は安い宿として覚えられてしまいます。私たちは、声をかける相手の順番を決めて埋めています。公式LINEの名簿や広告といった届ける場所は前もって整えておき、限定プランはそこに乗せて出します。
この順番には、理由があります。値引きは誰でもすぐに真似できますが、下げた値段はなかなか戻せません。先に名簿と広告で埋める力を持っておくと、値引きは最後の一手で済みます。
長野の松川館は、この順番で平日を埋めてきました。平日の稼働率は前の年の約2倍で、いまおおよそ70%です。支援先の北海道の宿でも、同じ順番で手を打っています。予約サイト(OTA)の使い方まで含めた全体像は、「旅館・ホテルのOTA運用の全体像」にもまとめています。
旅館・ホテルの閑散期はいつか。平日と、観光の谷になる時期の二つがある
対策の前に、自分の宿の閑散期がいつかをはっきりさせます。閑散期は、大きく二つに分かれます。
一つは、平日のように毎週空きやすい日です。土日や祝前日は埋まるのに火曜から木曜が弱い、という宿は多いです。
もう一つは、観光の谷になる時期です。これは宿のある地域によって変わります。雪の前の晩秋や、連休と連休のあいだの月が弱くなる宿もあります。
大事なのは、この二つを感覚で決めないことです。去年の予約台帳を開いて、埋まらなかった曜日と月を数で書き出します。ここがぼんやりしたままだと、どの打ち手も的を外します。
見るのは、曜日別と月別の二つの並びです。連泊が多いのか一泊が多いのか、直前の予約が多いのかもあわせて見ておきます。この傾向が分かると、平日向けのプランを一泊で作るか連泊で作るかまで決められます。
私たちの宿でも、まず曜日別と月別に予約を並べ直すところから始めました。並べ直してみて、平日の弱さがはじめて数字で見えました。そこから、平日向けの打ち手を決めました。松川館の平日の稼働率は、いまおおよそ70%です。前の年の約2倍になりました。
まず埋めるのは、すでにうちを知っている方。公式LINEの予告で平日とプランを出す
閑散期で最初に声をかける相手は、すでに泊まってくださった方です。新しいお客様を呼ぶより、一度来た方にもう一度来ていただくほうが手間もお金もかかりません。
そのためのつながりが、公式LINEの名簿です。公式LINEは、宿のアカウントと友だちになった方のトーク画面へ直接お知らせを送れる仕組みです。
名簿は、館内でいちばん増えます。松川館ではチェックインのときにQRコードを読んでいただくと、公式LINEの画面で宿泊台帳を書ける形にしています。登録と記入が一つの流れで終わるので、友だちが自然に積み上がります。
登録してくださった方には、順番に届くお知らせを用意しています。チェックインの30分後ごろに「オンラインコンシェルジュ」として一声かけ、滞在中の質問に公式LINEで答えられるようにしています。チェックアウトの後にはアンケートをお送りし、答えてくださった方へ次回1,000円引きをお渡しします。
この名簿に向けて、閑散期の平日のプランや限定プランを予告します。松川館の公式LINEは、友だちが約1.1万人です。新しいプランは、いきなり出しません。
予告は、三日ほどかけます。一日目は「こういうプランを準備中です」とお伝えします。二日目は「明日の何時に出します」と時間を予告します。三日目に、予告した時間どおりにプランを出します。すると、出した時間に予約がまとまって入ります。
名簿がまだ小さい宿でも、やることは同じです。館内の入口を増やして友だちを集めながら、いまいる方への予告から始めます。小さいうちは件数より、来てくださった方に必ず登録していただく流れを作るほうが先です。
配信は、宿泊の方と日帰りの方で分けます。宿泊の方には次の宿泊のご案内を送り、日帰りや地元の方には宴会や食事のお知らせを送ります。
配信の頻度は、月2回を基本にしています。多すぎるとブロックが増え、少なすぎると宿のことを忘れられてしまうからです。私たちも配信を始めたころ、割引の案内ばかりを送ってブロックが増えたことがあります。
そこで、季節の見どころのような読んでうれしい内容を軸にしました。閑散期のプランの予告も、この読んでうれしい配信の流れの中でお伝えします。名簿づくりの細かい手順は「OTAの手数料を下げ、宿の自社予約比率を上げるLINEの活用方法」にくわしく書いています。配信の始め方は「旅館・ホテルの公式LINEの始め方」をご覧ください。
次に、まだうちを知らない方へ。広告は平日の宿泊プランに絞り、近くに住む方へ出す
名簿だけでは、埋まらない日も出てきます。そこで、まだ宿を知らない方へ広告を出します。広告は、まだ宿を知らない方に向けた打ち手のなかで、いちばん早く反応が返ってきます。
閑散期の広告で大事なのは、絞ることです。絞るものは二つあります。一つは広告で案内する日で、空きやすい平日の宿泊プランを出します。もう一つは広告を届ける相手で、宿の近くに住む方に絞ります。日帰りの受け付けがある宿なら、近隣の方に日帰りの広告を出す手もあります。
ただし、絞りすぎには気をつけます。相手を細かく指定しすぎると、広告が届く人がいなくなります。最初は配信地域を宿の近くに決めるくらいの、ゆるい絞り方から始めます。
広告の行き先は、公式サイトにします。広告から来てくださった方に、宿の濃い情報を公式サイトで渡せるからです。そこで公式LINEに登録していただければ、次からは広告費をかけずに公式LINEでご案内を届けられます。
私たちは、1本の広告で予約まで取ろうとはしません。まず興味を持ちそうな方に公式サイトを見ていただくのが入口です。公式サイトを長く見てくださった方には、次の広告で宿のInstagramを見ていただきます。そこでフォローしてくださった方に、限定プランの広告を出します。閑散期は、この最後の段階を厚くします。
出したばかりの広告は、三日ほど触らずに置きます。毎日のように設定を変えると、配信の学習がやり直しになって成果が安定しないからです。閑散期は反応を急ぎたくなりますが、ここは我慢して数字を見ます。
効果は、クリックの数だけで決めません。宿の広告では、広告から入った予約の件数がなかなか見えないからです。予約ページを開いた数のような予約の手前の行動と、前年の同じ月の売上をあわせて見ます。
広告は、月10万円くらいの少額からでも始められます。いくらから始め、どう効果を見るかは「旅館の広告費は月いくらが適正か」にまとめています。
閑散期こそ一番いい時期として、限定プランを出す
ここからは、公式LINEの予告や広告で出す限定プランの中身の話です。閑散期のプランを、安さで作らないでください。「空いているから安くします」という見せ方では、宿の値打ちまで安く見えてしまいます。
私たちは、閑散期を「一番いい時期」として出します。その時期だからこそできる過ごし方を、プランの主役にします。
私たちが支援している北海道の宿では、秋を鹿のジビエがいちばん美味しい時期として出しています。「この時期の鹿がいちばん美味しい」という理由と、「料理長がみんなに食べてほしくて特別なプランにした」という思いをそのまま伝えます。
プランの概要には、この理由と思いを文章でそのまま載せます。なぜこの時期なのか、料理長が何を食べてほしいのかを短くても自分の言葉で書きます。写真は、料理の顔になる一枚だけは本当にきれいなものを使います。
この鹿のプランには、いまも予約が入っています。2026年10月の時点で、おおよそ1日1件ほどのペースです。安さを売りにしたプランではありません。その時期にしか味わえない、という理由で選んでいただいています。
平日向けのプランも、同じ考え方で作れます。お風呂を貸切で使える時間を広げたりチェックアウトの時刻を遅くしたりして、平日ならではの価値を足します。値引きから入らず、過ごし方で作るのがこつです。
値引きは、元値を下げずにクーポンで出す
ここまでやっても空いた日は、値引きを使います。値引きそのものは、閑散期の大事な一手です。ただし、出し方を間違えないようにします。
やってはいけないのは、宿の元の値段そのものを下げることです。予約サイトの在庫をまとめて管理するサイトコントローラーで元値を下げると、元から安い宿に見えてしまいます。すると、せっかくのお得感まで消えます。
私たちが使うのは、クーポンです。クーポンなら、元の値段を見せたまま値引きできます。たとえば2万円のプランに、1万8,000円で泊まれるクーポンを付けます。元の2万円が見えているので、お得さが伝わります。

クーポンを使う場面は、二つあります。一つは、閑散期と分かっている時期の底上げです。もう一つは、数日先の日がどうしても埋まらないときの直前の一押しです。どちらも、元値を下げずに出します。
私たちの宿で使う値引きの幅は、10〜15%です。大きく下げすぎると、元値のほうが嘘に見えてしまいます。2万円のプランなら、2,000〜3,000円の値引きです。クーポンには予約サイトの手数料がかかります。それでも、元値を見せたままお得さを伝えられる利点のほうが大きいです。
本当は、クーポンを出す前に公式LINEや名簿で先に埋めておくのが本筋です。クーポンは、そこまでやって残った日のための最後の一手です。
プランは、作っただけでは予約が入らない。見ていただける場所に置くのが先
閑散期の相談でいちばん多いのが、「限定プランを作ったのに予約が入らない」というお悩みです。理由は、はっきりしています。プランを、お客様が見ていない場所に置いているからです。
どんなにいいプランでも、見ていただけなければ無いのと同じです。順番が逆になっていることが、とても多いです。
プランを作る前に、届ける場所を整えておくのが正しい順番です。届ける場所は四つあります。名簿に予告する公式LINE・近くに住む方に届ける広告・過ごし方を見せるInstagramと公式サイトです。どれも、閑散期が来る前から整えておきます。
私たちも、先に届ける場所を作ってから閑散期のプランを出しています。プランは、その器に乗せて初めて予約につながります。
この作業を宿の中だけで続けるのが難しい場合は、外に任せる方法もあります。任せる範囲と宿に残す仕事は「旅館・ホテルの集客代行に任せる仕事と、宿に残す仕事」にまとめています。
私たちの宿での閑散期の埋め方。松川館と北海道の宿でやっている順番
ここまでの話を、私たちの宿での順番としてまとめます。閑散期が来るたびに、同じ順番で手を打っています。

松川館は、この順番で平日を埋めてきました。平日の稼働率は前の年の約2倍の、おおよそ70%になりました。
限定プランとクーポンは、どちらか一つではありません。閑散期は臨機応変に両方を出します。過ごし方で価値を足した限定プランを本筋にして、それでも空いた日をクーポンで埋める使い分けです。
よくある二つの誤り。元値の値下げで戦う、プランを作って置くだけ
どちらも、私たちが実際にやってつまずいた道です。
正直に言うと。閑散期の空室は、ゼロにはならない
ここまでの順番で手を打っても、閑散期の空室はゼロになりません。松川館の平日の稼働率がおおよそ70%ということは、いまも3割ほどは空いているということです。
平日や観光の谷になる時期は、そもそも泊まりたい方の数が少ない時期です。満室を狙うのではなく、去年より空きを減らすという見方で十分です。
私たちも、閑散期を一気に埋められたわけではありません。公式LINEの名簿を育て、広告の絞り方を試してきました。限定プランの見せ方も少しずつ直してきました。この積み重ねで、平日の予約が増えてきました。
閑散期の対策は、一つの魔法ではありません。名簿と広告とプランを順番に重ねていく地道な作業です。だからこそ、早く始めた宿ほど翌年の閑散期が楽になります。
よくある質問
旅館の閑散期は、いつのことですか。
大きく二つあります。一つは、平日のように毎週空きやすい日です。もう一つは観光の谷になる時期で、宿のある地域によって変わります。まずは去年の予約台帳を見て、自分の宿で空きやすい曜日と月を書き出すところから始めます。
閑散期は、値引きから始めたほうがいいですか。
値引きから入ることはおすすめしません。先に公式LINEの予告で宿を知っている方の予約を集め、平日の宿泊プランの広告で近くに住む方の予約を集めます。値引きは、それでも空いた日に元値を下げずクーポンで出します。
閑散期の限定プランは、どう作ればいいですか。
「閑散期こそ一番いい時期」として作ります。私たちが支援する北海道の宿では、秋を鹿のジビエがいちばん美味しい時期として料理長が食べてほしい特別なプランにしています。安さではなく、その時期だからできる過ごし方で作ります。
限定プランを作ったのに、予約が入りません。
プランは、作っただけでは予約が入りません。広告やInstagram・公式サイト・公式LINEなど、お客様に見ていただける場所に置くのが先です。私たちも、プランを作る前に届ける仕組みを整えています。