OTAの手数料を下げ、宿の自社予約比率を上げるLINEの活用方法

旅館のLINE集客というと、上手な配信を思い浮かべる方が多いです。ですが、その前に、もっと地味で大事な作業があります。「名簿を作る」ことです。チェックインのときに公式LINEの登録をお願いし、一度来てくれた方を、次はOTAを介さず直接予約で迎える。私が関わってきた2つの宿で、実際にやってきたことを、道具がなくても手で再現できる形でお伝えします。

松川館の公式LINE
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先に結論。チェックインのときに、公式LINEの登録をお願いする

「旅館 LINE 集客」と検索して、この記事にたどり着いた方へ。長い前置きは省きます。結論から先にお伝えします。

旅館のLINE集客で、いちばん最初にやることは、上手な配信の練習ではありません。「名簿を作る」ことです。もっと言うと、チェックインのときに、目の前のお客様へ公式LINEの登録をお願いする、というたった1つの作業です。

この記事は、その1つの作業に絞って書きます。あれもこれもと欲張らず、まずは名簿を作る。その手順を、私が関わってきた2つの宿の実例で、順番どおりにお伝えします。

1
名簿とは、一度でも泊まってくれた方の連絡先です。新しいお客様を探す前に、すでに来てくれた方とつながっておく、という考え方です。
2
集めるタイミングは、チェックインのときが一番です。お客様が宿の中にいて、スタッフと顔を合わせている、その場でお願いします。
3
名簿がたまると、次の予約を直接お知らせできます。予約サイト(OTA)を通さずに、宿から直接ご案内できるようになります。
4
直接予約が増えると、OTAへ払う手数料の総額が減ります。手数料率そのものが変わるわけではありません。同じお客様でも、来る入口が変わるだけで、宿に残る金額が変わります。

ここから先は、この4行を、実例と手順でくわしくお伝えします。うまくいった話だけでなく、正直に苦労する部分も書きます。

なぜLINEなのか。OTAの手数料を、次の予約で外すため

読んでくださっている方の多くが、いま感じている痛みは、たぶん「OTAの手数料」だと思います。OTAは、楽天トラベルやじゃらんのような、予約を集めてくれる予約サイトのことです。集客の力は大きいのですが、予約が入るたびに手数料がかかります。

たとえば、1泊2万円のご予約が、手数料15%のOTA経由だったとします。すると、3,000円が手数料として引かれます。これは仮に置いた数字で、実際の手数料率はOTAごとに違います。1予約あたりいくら消えているかの計算は、「OTAの手数料は1予約あたりいくら消えているか」にまとめています。

ここで大事なのは、手数料そのものを値切る話ではない、ということです。OTAは、新しいお客様と出会うためには、とても役に立ちます。問題は、「一度来てくれた人にまで、毎回OTAの手数料を払い続けている」という状態です。

一度泊まってくれた方は、宿のことをもう知っています。その方が次に来るとき、わざわざ予約サイトで探し直す必要はありません。宿から直接ご案内して、直接予約してもらえばいい。そのための連絡手段が、公式LINEです。

LINEそのものが手数料の料率を下げるわけではありません。減るのは、OTAへ払う手数料の総額です。一度来た方が、次にOTAを介さず直接予約してくれると、その1泊分の手数料が、まるごと宿に残ります。LINEは、その「次は直接どうぞ」をお願いするための道具です。だから、まず名簿を作る。連絡できる相手がいなければ、お願いのしようがないからです。

先にお断りしておきます。この記事でお伝えするのは、その仕組みの作り方です。登録の前後で予約や手数料がどう変わったか、という成果の数字は、計測できたものだけをお見せする方針なので、ここには出しません。お渡しするのは、2つの宿で実際にやってきた手順です。

「名簿を作る」という考え方。リピーターを増やすより手前の話

「リピーターを増やしましょう」という言葉は、よく聞きます。ですが、これは精神論になりがちです。増やそうと思って増えるものではないからです。

私は、リピーターを増やすより1つ手前の、具体的な作業から入ることをおすすめします。それが「名簿を作る」ことです。この記事で「名簿」と呼ぶのは、一度でも泊まってくれた方に、こちらから連絡できて、しかも誰なのかが分かる状態のことです。

公式LINEに登録してもらうと、その方は宿の公式LINEの「友だち」になります。ただ、それだけでは、連絡できる人数が増えるにとどまります。あわせて、チェックインの記入フォームで、お名前や地域を教えていただきます。この「友だち登録」と「記入」の2つがそろって、はじめて、誰がいつ来てくれたかの分かる名簿になります。この記事で名簿と言うときは、この状態を指しています。

順番で言うと、こうなります。まず、チェックインのときに登録してもらって、名簿を作る。次に、その名簿に向けて、また来たくなる連絡を送る。その結果として、リピーターが生まれる。リピーターは、目的ではなく、名簿づくりの結果です。

この記事では、再訪率という指標そのものの動かし方や、集客の手段を全部並べる話は書きません。そこは別の記事に譲ります。再訪率の推移は「旅館のリピーター率を0%から13.8%にするまでにやったこと」に、集客の手段の一覧は「旅館の集客方法まとめ」に書いています。この記事は、その全部の土台になる「名簿を作る」1点だけに絞ります。

みつの実例。チェックインのときに、名簿を作っている

1つ目の実例は、私たちが支援している「森のオーベルジュ みつ」という宿です。古民家を移築した、静かな一軒宿です。

みつの公式LINEには、はっきりした役割があります。新しいお客様を広く集める入口ではありません。「宿泊した人だけ」がつながる、既存のお客様の母艦です。チェックインのときに、ほぼ全員へ登録をご案内しています。宿の中で、顔を合わせているそのタイミングでお願いするので、自然に登録していただけます。

登録の入口になっているのが、チェックインの記入フォームです。このフォームは、公式LINEの中で開く形にしてあります。そのため、友だち登録と記入が1つの流れでつながり、あとで「どの友だちが、どのお客様か」を照らし合わせる手間がありません。お名前や連絡先を記入していただくのですが、みつでは、そのフォームの最後に一工夫を足しました。「みつを知ったきっかけ」を選ぶ設問(任意・選択式)を追加したのです。回答は任意なので、お客様に負担はかかりません。それでも、どの経路で宿を知ったかが、毎月少しずつ積み上がっていきます。

このフォームに記入された名簿は、2026年6月の時点で、499件たまっていました。499件というのは、チェックインのときに記入してもらった名簿の件数です。LINEの友だちの総数でも、予約の件数でも、リピーターの人数でもありません。あくまで、一度でも泊まってくれた方に、こちらから連絡できる連絡先が、それだけ積み上がっている、ということです。

配信には、公式LINEに機能を足す「Lメッセージ」というツールを使っています。ただ、ツールの話は本質ではありません。大事なのは、チェックインのたびに名簿が1件ずつ増えていく仕組みが回っていることです。地道に積み上げた結果が、499件です。

正直にお伝えすると、このやり方が、みつの売上やリピート率をどれだけ動かしたかの数字は、ここには出しません。効果の数字は、計測できたものだけをお見せする方針だからです。今お伝えできるのは、「名簿を作る仕組みが回っている」という事実までです。

松川館の実例。来た人に登録してもらい、名簿にして届ける

2つ目の実例は、長野県高山村・山田温泉にある「松川館」です。私たちが運営に関わっている宿です。

松川館でも、考え方はみつと同じです。来てくれた人に公式LINEへ登録してもらい、名簿にして、そこへ届ける。この方式で、リピーターが増えていきました。毎月のように来館してくださる常連のお客様もいらっしゃいました。件数や割合の数字は付けませんが、名簿を土台にした関係づくりが、たしかに働いていた、というのが私の実感です。

松川館の公式LINE

公式LINEの友だちは11,085人。Instagramのフォロワーは1.2万人。どちらも、この宿で積み上げた実数です。

上の画面にあるとおり、この宿の公式LINEの友だちは、11,085人まで積み上がりました。ここで、数字の読み方を正直に補足させてください。

この11,085人は、あくまで公式LINEの「友だち」の人数です。先ほどのみつの499件、つまり「チェックインで記入してもらった名簿の件数」とは、数えているものが別です。さらに、11,085人がそのまま予約の件数やリピーターの人数になるわけでもありません。友だちの人数、記入された名簿の件数、予約の件数。この3つは、混ぜずに分けて読んでください。

それでも、両方の宿に共通していることが1つあります。来てくれた人との連絡先を、その場でお預かりして、名簿にしている、ということです。宿の規模や立地が違っても、「来た人に登録してもらう」という入口の作業は、まったく同じです。

名簿を作る手順。今日からできる5つのステップ

ここが、この記事の本題です。特別な道具がなくても、手で再現できる形にしておきます。順番に並べます。

1
公式LINEのアカウントを用意する。LINE公式アカウントは、無料で作れます。宿の名前で1つ用意します。ここが、名簿を入れる箱になります。
2
チェックインのときにお願いする一言を、決めておく。「館内のご案内と、チェックアウトのお時間をLINEでお送りします」と伝えると、お客様も受け取りやすいです。登録用のQRコードを1枚だけ印刷して、フロントに置いておきます。
3
登録のついでに、名簿の項目を記入してもらう。お名前、地域、来館のきっかけの3つで十分です。記入フォームを公式LINEの中で開く形にしておくと、友だち登録と記入が1つの流れでつながり、あとで名前と照らし合わせる手間がありません。みつのように、フォームの最後へ「知ったきっかけ」を選ぶ設問(任意)を足しておくと、経路も見えてきます。
4
帰られたあと、お礼のメッセージを1通送る。売り込みではなく、来てくれたことへのお礼です。たとえば「昨日はお越しいただき、ありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています」の一言で十分です。この1通で、宿とお客様のあいだに、細い線が1本つながります。
5
次のご予約のきっかけを、季節ごとに送る。新しいお料理、空いている平日、季節限定のプラン。予約サイトではなく、LINEから直接予約してもらう入口を、こちらから用意します。

この5つのうち、1と2は、今日のチェックインからでも始められます。3から5は、名簿が数件たまってから考えても、じゅうぶん間に合います。大きなシステムを先に作る必要はありません。まず、目の前のお客様に登録をお願いする。そこが出発点です。

配信ツールを入れるかどうかは、名簿がたまってから決めれば大丈夫です。みつではLメッセージを使っていますが、最初の1件目は、無料の公式LINEとQRコード1枚から始まります。

集めたあと、LINEで何を送るか。宣伝ではなく「また来たくなる理由」

名簿がたまってくると、次は「何を送るか」で迷います。ここでやりがちなのが、割引の連発です。安さで呼び戻そうとすると、安いときしか来ない関係になっていきます。

私がおすすめするのは、宣伝ではなく「また来たくなる理由」を送ることです。たとえば、季節でお料理が変わったこと。静かに過ごせる平日の空きがあること。前に来てくれたときには無かった、新しい過ごし方があること。読んだ方が、あの宿のあの時間をもう一度、と思い出せる連絡です。

送る回数は、多ければいいわけではありません。届きすぎる連絡は、ブロックの理由になります。宿から出す連絡は、お客様にとって「読んでよかった」と思えるものに絞ります。名簿は、数を集めることより、つながりを保つことのほうが大事です。

そして、連絡の最後には、必ず直接予約の入口を置きます。予約サイトのリンクではなく、宿へ直接つながる予約のリンクです。ここが、OTAの手数料を外す、具体的な出口になります。直販を増やす手順そのものは、「OTA依存から抜け出すには」にまとめています。

正直に言うと。名簿づくりに、近道はありません

ここまで手順を書いてきましたが、正直なことも書いておきます。

名簿は、一晩で増えません。1日のチェックインで集まるのは、その日に泊まった組数の分に限られます。近道はありません。地道に登録をお願いし続けることでしか、名簿は増えません。

効果の数字についても、正直に線を引きます。この記事に、みつのリピート率や売上がどれだけ動いたか、という成果の数字は出しません。効果は、本番で計測できたものだけをお見せする方針だからです。今お伝えできるのは、「名簿を作る仕組みが回っている」という事実と、2つの宿でやってきた手順です。景気のいい数字を先取りするより、確かめた事実だけをお渡しします。

それでも、この作業をおすすめするのは、始めるのにお金も才能も要らないからです。要るのは、チェックインのたびに一言お願いする、その手間ひとつです。手間の割に、宿に残る土台としては大きい。だから、まず名簿を作る。ここから始めることを、私はおすすめします。

この方法が向いている宿、向いていない宿

最後に、正直な向き不向きも書いておきます。どんな宿にも同じように効く、とは言いません。

1
向いている宿。一度来た方が、また来たくなる理由がある宿です。お料理、お湯、静けさ、過ごし方。もう一度思い出せる何かがあれば、名簿は生きた資産になります。
2
向いている宿(その2)。OTA経由の予約が多く、手数料が重いと感じている宿です。一度来た方が、次は宿の予約サイトから直接予約してくれると、宿に残る金額が変わります。
3
いったん立ち止まったほうがいい宿。一度も泊まったことのない、新規のお客様を増やすことが先の宿です。名簿は「来た人」を土台にする方法なので、来客をこれから増やしていく宿なら、広告やSNSでの出会いづくりを先に整えます。

とはいえ、新規集客を整えている宿でも、名簿づくりは今日から並行して始められます。今日泊まった1組に登録をお願いする。それだけで、名簿の1件目が生まれます。出会いを増やすことと、来た人とつながることは、どちらかを選ぶものではなく、両方を回していくものです。

よくある質問

公式LINEの登録は、いつお願いするのがいいですか。

チェックインのときが、いちばん自然です。お客様は宿の中にいて、スタッフと顔を合わせています。そのタイミングで、館内のご案内やチェックアウトのお時間をLINEでお送りします、と伝えて登録していただきます。森のオーベルジュみつでは、チェックインのときに、ほぼ全員へ登録をご案内しています。

名簿は、何人くらいから意味がありますか。

人数の下限はありません。名簿は、一度でも泊まってくれた方の連絡先です。10人なら10人に、次のご予約を直接お知らせできます。みつのチェックインの記入フォームには、2026年6月の時点で499件の記入がたまっています。ゼロから1件ずつ積み上がっていくものです。

LINEを使うと、OTAの手数料は下がりますか。

LINEそのものが手数料を下げるわけではありません。手数料が下がるのは、一度来てくれた方が、次にOTAを介さず直接予約してくれたときです。LINEは、その直接予約をお願いするための連絡手段です。OTAの手数料が1予約あたりいくらになるかの計算は、関連記事にくわしく書いています。

配信のツールは何を使えばいいですか。

公式LINEに配信の機能を足すツールがいくつかあります。みつではLメッセージを使っています。順番としては、まず公式LINEのアカウントを作り、チェックインのときに登録をお願いするところから始めます。配信ツールは、名簿がたまってから選んでも間に合います。

名簿には、お客様の何を記入してもらえばいいですか。

お名前と、地域と、来館のきっかけの3つで十分です。みつでは、チェックインの記入フォームの最後に「みつを知ったきっかけ」の設問(任意・選択式)を足しました。回答は任意なので負担をかけず、それでも予約の経路が毎月積み上がります。個人が特定される情報を無理に集める必要はありません。

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