AIに記事を書かせると、なぜか内容が薄くなる。きれいにまとまっているのに、手触りがない。そう感じている方に向けて書いています。私は、AIに書かせたSNS投稿の下書きを66本ためて、全部ボツにしました。そこから分かったのは、薄さの原因はプロンプトではなく、渡すネタと工程にある、ということです。うちが実際に通している3つの工程を、自社の記事運用の実数つきで、正直にお伝えします。
いま「AIに記事を書かせているのに、どれも薄い」と悩んでいる方に、長い前置きは要らないと思います。結論から先にお伝えします。
AIが書いた記事が薄くなる主な原因は、AIの性能や、プロンプト(AIへの指示文)の巧拙ではありません。少なくとも私たちの場合、薄さの主な原因は「渡すネタ」と「通す工程」のほうにありました。私たちは、自社サイトのコラムを、AIと分担しながら書いています。そのなかで、薄い記事を大量に作ってしまう失敗を、何度も踏んできました。そこから作った工程を、3つに整理すると、こうなります。
この3つには、共通する考え方が1つあります。それは「AIに任せられる形に、人が整えてから渡す」ということです。丸投げの逆です。ここから先は、私が実際にどう失敗して、どうこの工程にたどり着いたかを、数字ごと正直に書きます。
工程の話をする前に、私自身の失敗から書かせてください。ここが抜けると、ただのノウハウの押し売りになってしまいます。
少し前まで、私はSNSの投稿を、全部AIに任せようとしていました。投稿を考えるのは、地味に手間がかかります。だったら自分の会社のことをAIに教え込んで、あとは毎日、勝手に書いてもらえばいい。そう考えて、けっこうな時間をかけて、仕組みを作り込みました。
そうして、AIが書いてくれたSNS投稿の下書きが、66本たまりました。
結論から言うと、全部ボツにしました。一本も残りませんでした。読み返しても、どれも「いい感じにまとまっているけれど、私が書かなくてもいい文章」だったからです。たとえば「地域の魅力を再発見して、みんなで盛り上げていきましょう」といった一本。正しいし、きれいです。でも、どこかで100回は読んだことのある文章で、私が書く意味がありません。
理由は、すぐに分かりました。AIがすらすら書いてくれるのは、結局「誰が書いても同じ、正しいこと」だったのです。この失敗は、SNSの投稿だけの話ではありませんでした。記事も、まったく同じでした。だから今日は、この66本のボツから私が何を変えたのかを、記事作成の工程として、順番にお伝えします。
なぜAIの記事は薄くなるのか。ここを先に押さえておくと、あとの工程が腑に落ちます。
AIは今、それっぽく正しい一般論を、タダで、しかも無限に書けるようになりました。「◯◯のコツ5選」のような記事は、もう一瞬で、いくらでも出てきます。これは、とても便利なことです。ただ、便利さの裏で、一つのことが起きています。「AIでも書ける文章」の価値が、どんどん下がっているのです。
検索で上に出したくても、同じような一般論が何万本もある中に埋もれます。読む側からすれば「知っている話」なので、指も止まりません。私がボツにした66本は、まさにこれでした。正しいけれど、私である必要が、どこにもない文章です。
では逆に、AIが「自分では持ってこられないもの」は何か。しばらく考えて、たどり着いた答えは、2つでした。
この2つは、AIの手元にはありません。私の会社で先週なにが壊れたかも、その時の数字も、ネットのどこにも落ちていないので、AIは拾ってこられません。私が渡さないかぎり、AIには書きようがないのです。
正確に言うと、AIの文章力が足りない、という話ではありません。素材(自分の失敗と数字)さえ渡せば、AIは上手に文章にしてくれます。でも、その素材そのものと、「どれを、どこまで正直に出すか」の判断は、体験した本人の側にしかありません。ここが、代わりのきかないところです。だから工程の1つ目は、文章の書き方ではなく、この「素材を貯める」ところから始まります。
一次情報という言葉を、むずかしく考える必要はありません。ここでは「自分の現場でしか起きていない、生の具体と数字」くらいの意味です。だれかの記事の要約ではなく、自分がその場にいたから知っていること。それが一次情報です。
私たちは、記事を書き始める前に、この一次情報をメモとして貯めておく箱を持っています。仕事のたびに、うまくいったこと、失敗したこと、そのとき出た数字を、1行ずつ書き留めておく。そういう地味な作業です。記事を書くときは、頭でネタを捻り出すのではなく、この箱から素材を拾ってきます。
具体例を出します。私たちの現場で、こんなことがありました。ある収益の試算を、2つのAIに別々に計算させて、結果を表に保存させる作業です。2つとも「保存しました、検算も一致しました」と、それらしい数字つきで完了報告してきました。ところが実際に表を開くと、0件。1行も保存されていませんでした。もっともらしい数字が返ってくるほど、逆に疑わないといけない。痛い勉強でした。
この「0件だった」という話は、どんなに検索しても出てきません。私たちの中でしか起きていないからです。こういう小さくて生々しい具体こそ、AIに一般論を書かせても絶対に埋められない差になります。派手な数字である必要はありません。0件とか、1件とか、その小ささこそが、他の誰にも書けない証拠になります。
別の日には、こんなこともありました。全クライアントの広告の数字を、AIに毎朝見張らせる仕組みを動かし始めた初日に、いきなり1件、広告が止まっているのを見つけたのです。誰も気づかないままだったら、来るはずだったお客さんを、何日も取りこぼしていました。派手ではありません。1件です。でも、この1件の話も、私が書かないかぎり、世のどこにも出てきません。私たちは、こういう出来事を、その日のうちにメモの箱へ1行で放り込んでおきます。記事のネタは、机で捻り出すのではなく、この箱から拾ってくる。だから、書く前に貯めておくことが、そのまま記事の濃さになります。
ここで一つ、注意があります。数字は、必ず確かめたものだけを使うことです。記憶や推測で書いた数字は、たとえ小さな違いでも、記事全体の信頼を一発で崩します。私たちは、記事に数字を入れるときは、元になったファイルやメモを開いて、その場で確かめてから書く、という決まりにしています。
素材が貯まったら、すぐに書かせたくなります。ですが、その前にもう1つ、決めることがあります。この記事の「背骨」です。
背骨とは、この記事で一番伝えたいこと、その1本のことです。むずかしく考える必要はありません。1本に絞るために、2つの問いを使います。読んだ人の頭に、何を残したいか。読み終わったあと、どんな気持ちになってほしいか。この2つを先に考えると、伝えたい背骨が1本に定まります。
たとえば、いまあなたが読んでいるこの記事なら、頭に残したいのは「AIにはネタと工程を渡す」。気持ちのほうは「自分のところでも真似できそう」。この2つから、背骨は「プロンプトより、渡すネタと工程が記事の濃さを決める」の1本になります。これを先に決めてから、AIに書いてもらっています。たった1本ですが、これがあるだけで、記事が「ただの説明」に落ちずに済みます。
背骨を決めずに書かせると、どうなるか。正しいことは言っているのに、なぜか冷たい記事になります。情報は合っているのに、心が動かない。あちこちに話が飛んで、結局「何が言いたい記事なのか」が残りません。網羅しようとするほど、焦点がぼけていきます。
逆に言うと、1つの体験からでも、背骨を変えれば、まったく別の記事が何本も書けます。同じ「0件だった」という失敗でも、「AIの報告は鵜呑みにするな」という背骨なら注意喚起の記事に、「小さな数字ほど武器になる」という背骨なら発信論の記事になります。ネタが尽きないのは、体験の数ではなく、この背骨の掛け算のおかげです。
背骨を1本に決めたら、それをAIに渡して、はじめて書いてもらいます。素材(工程①)と、背骨(工程②)。この2つを先に人が用意してから渡す。これが、丸投げとの決定的な違いです。
ここが、一番効いている工程です。書き上がった記事を、いきなり公開しません。先に、性格の違う「3人のAI読者」に読ませて、素の感想と点数をもらいます。書き手のAIとは、別のAIにやらせます。同じAIに採点させると、身内の甘さが出るからです。
3人には、それぞれ違う役をふります。
むずかしいことは、していません。書き手とは別のAIに、この3つの役を、1人ずつ別々に演じさせるだけです。実際に渡している指示も、短いものです。1人目には「あなたは辛口の読者です。誇張や、根拠のない主張、話の飛びを、遠慮なく指摘してください」。2人目には「あなたは前提知識ゼロの読者です。分からない言葉や、話が見えなくなる場所を、正直に教えてください」。3人目には「あなたは、この記事で一番届けたい読者です。この人を信頼できるか、続きを読みたいかで、100点満点で点数をつけてください」。この3人を1つの指示にまとめると、全部が甘くなるので、必ず別々に読ませます。
ここで、大事なコツが1つあります。全員に好かれようとすると、誰の心にも残らない、ということです。だから「今回はこの一人に刺さればいい」と、狙う読者を先に決めておきます。主審査員がある点数を超え、かつ3人とも致命的な指摘がゼロになるまで、直しては戻すを繰り返します。私たちは、その合格の下限を80点に置いています。3人ぜんぶを高得点にしようとはしません。それをやると、誰に向けた記事か分からない、当たり障りのないものになるからです。
ここでも、門番の役割があります。3人が「もっと具体的な数字を出せ」と言っても、それが出してはいけない情報(取引先の事情や、まだ計測していない数字)なら、出しません。かわりに、記事の中に「ここは事情があって出せません」と正直に断りを書いて対応します。指摘を全部のむのではなく、直せるものだけ直す。ここは人が決めます。
この「AIの成果物を、別のAIにチェックさせる」という考え方は、記事だけでなく、私たちの仕事全体で使っています。くわしくは「AIの成果物を、AIにチェックさせている話」に書いています。
工程③が、実際にどう効くのか。抽象的な話だけでは伝わらないので、うちの記事運用で実際にあった、点数の動きをお見せします。
ある記事を、3人のAI読者に読ませたとき、主審査員の最初の点数は68点でした。合格の下限である80点に、届いていません。指摘を読むと、「棚卸しの手順に、悪い面が書かれていない」というものでした。そこで、手順の中に、出ていくお金も同じ紙に書く、という一文を足しました。もう一度読ませると、82点まで上がりました。さらに一周直して、92点になりました。
念のため、この点数が何かを正直に書いておきます。これは、私たちが社内で使っているものさしです。読者の反応そのものではありません。それでも、直す前と後で記事がどう変わったかを測る足場として、毎回使っています。
点数そのものより、大事なことがあります。点数が上がったのは、AIの文章力が上がったからではありません。人が「悪い面も書く」という指摘を受け止めて、素材を1つ足したからです。つまり、点数を動かしているのは、AIではなく、直しの判断のほうです。
もう一つ、この工程で学んだことがあります。ある記事で、地の文に強い一言を置いたら、点数が82点から62点まで急に落ちたことがありました。原因は、その一言の刃が、読者本人に向いていたことでした。読者を突き放す言葉になっていたのです。そこで、同じ一言を「過去の自分に向けた言葉」に書き換えたら、点数は82点に戻りました。刃は、読者ではなく、過去の自分や古い常識に向ける。これは、AIに読ませなければ気づけなかった学びです。
ここまで読むと、「結局、人がやることが多いじゃないか」と感じるかもしれません。その通りです。ただ、任せていいところは、はっきり任せています。分担を整理しておきます。
たぶんこれから、文章そのものは、どんどんAIが上手に書くようになります。私も、そこは任せていくつもりです。でも、「どの失敗を出すか」「どの数字を正直に見せるか」を選ぶところだけは、最後まで人の側に残ると思っています。だから「AIに書かせる」というと丸投げに聞こえるかもしれませんが、実際は逆です。AIに任せられる形に整えるのが、いちばん人間の仕事なのだと感じています。
ちなみに、AIが同じ失敗を二度しないように、気づきを記録して次に渡す仕組みも、別に持っています。その話は「「学習ログ」という発明」に書きました。
ここまで工程の話をしてきましたが、私自身が、その工程を守れなかった話も、正直に書いておきます。
あるとき、記事をとにかく速く量産したくて、3人のAI読者に読ませる工程を飛ばして、下書きを24本、一気に作ったことがありました。結果は、24本とも却下でした。全部です。読み返すと、どれも薄いか、事実の確認が甘いか、背骨がぼやけているかの、どれかでした。工程を飛ばすと、こうなります。
この失敗のあと、私は「次から気をつけます」で済ませませんでした。気をつける、という気持ちは、忙しくなると必ず崩れるからです。かわりに、工程を飛ばせない仕組みのほうを作りました。審査を通していない記事は、公開の手前で自動的に止まる。人の意志ではなく、仕組みで止める。そうしないと、また同じことをやると分かっていたからです。
なぜこの失敗まで書くのか。理由は単純です。工程①②③は、たしかに効きます。でも、効くと分かっていても、忙しいと人は飛ばします。だから、真似するなら「気をつける」ではなく、「飛ばせない仕組みにする」ところまでセットで考えてほしいのです。私たちが実際に踏んだ、ほかのAI活用の失敗は「AI導入の失敗事例と原因」に、4つまとめて出しています。
ここまで、うまくいった工程を中心に書きました。ただ、正直に言うと、私も最初は、AIに全部書かせて楽をしようとしていた側です。66本ボツにして、ようやく気づいたクチです。今こうして工程の話をしていること自体、その失敗から拾ったものでしかありません。
もし、自分のAIに記事を書かせてみて「なんだか薄いな」と思っているなら、まずはプロンプト集を探すのを、いったんやめてみてください。そのかわりに、3つの工程を、簡単な形からでも始めてみてください。書く前に、自分の失敗や数字をメモに貯めておく(工程①)。この記事で一番言いたいこと1本を決める(工程②)。書き上がりを、別のAIに読者として読ませる(工程③。むずかしければ、まずは一晩置いて自分で読み返すだけでも構いません)。この3つから始めるだけで、記事の手触りは変わります。
特別に高い道具は、ひとつも要りません。AIに渡す素材と、通す工程を変えるだけです。道具がすごいのではなく、道具に何を渡して、どんな関所を通すか。そこに、その人らしさが出ます。私も、まだ毎回この工程を回しながら、少しずつ手直しを続けています。
AIが得意なのは「誰が書いても同じ、正しいこと」だからです。角が取れていて、間違っていなくて、どこかで読んだことがある。そういう一般論を、AIはいくらでも上手に書けます。逆に、あなたの現場で実際に起きた失敗や、手元にしかない数字は、渡さないかぎりAIには書けません。薄さの正体は、文章力ではなく、渡すネタの側にあります。
プロンプトだけでは、途中までしか直りません。文体や語尾は指示で整いますが、それは見た目の部分です。中身の薄さは、一次情報を渡し、背骨を1本決め、公開前に読み返して直す、という工程で消えます。プロンプト集を探すより、この工程を作るほうが効きます。
特別に高いツールは要りません。私たちがやっているのは、AIに渡す素材と指示文を工夫することと、書き上がりを別のAIに読ませて直すことだけです。道具そのものより、何を渡して、どんな順番で通すか。そこに差が出ます。費用の内訳はお答えしていませんが、真似できないような特別な仕組みではありません。
そのまま公開するのは、おすすめしません。私たちは、公開前に必ず読み返す工程を挟んでいます。事実に間違いがないか、数字は確かめたものか、出してはいけない情報が混ざっていないか。ここを飛ばして量産した下書きを、24本まとめてボツにしたことがあります。書かせることと、出すことは、別の作業だと考えています。
できると思います。私たちも、地方の小さな会社です。特別な人員も、高価な道具も使っていません。やることは、書く前に自分の失敗や数字をメモに貯めておくこと、この記事で一番言いたいこと1本を決めること、書き上がりを別のAIに読者役で読ませること(むずかしければ、一晩置いて自分で読み返すだけでも構いません)。まずはこの3つからで十分に変わります。
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