旅館の現場でAIをどう使っているか、
全部見せます

私たちは自社で旅館を運営しながら、AI導入支援を仕事にしています。だとすれば、自分たちの現場で実際に何が動いていて、何がまだ動いていないかを隠す理由はありません。Slackに常駐する「AI女将」から、スタッフの個人ページ、管理者用の画面、検証中の予約連携、構想段階の電話AIまで、順番にお見せします。

旅館の現場でAIをどう使っているか|自社運営の旅館での実践
CASE — AI活用の全体像  ·  自社の運用

先に結論。動いているAI、動いていないAI

「AIを使っています」とだけ言われても、何がどこまで本当か分かりません。まずは正直に、今の状態を分けて書きます。

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すでに毎日動いているもの。Slackに常駐して現場のスタッフとやり取りする「AI女将」。スタッフ一人ひとりの「マイページ」(個人の帳簿)。管理者が旅館全体を見渡す「帳場」。この3つは、実際の現場で日々使われています。
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検証は終わり、導入はこれからのもの。予約システムとAIの仕組みをつなぐ連携です。技術的にできることは実際の仕様書を読んで確認済みですが、契約や切り替えはまだ行っていません。
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構想段階のもの。電話対応をAIに任せる仕組みです。技術的な実現性は調べていますが、実装はまだです。
うちのAI活用は正直に3段階。毎日動いてる・検証済み・ただの構想

ここから先は、この3つの段階を混ぜずに、それぞれ何をしていて何をしていないかを説明します。

なぜ、全部見せるのか

私たちはAI導入支援を仕事にしているからこそ、自社で運用していない仕組みを人に勧めるのは筋が通らないと考えています。だから、うまくいっている部分だけでなく、まだ検証段階のものや構想止まりのものも、そのまま公開することにしました。

もう1つ理由があります。旅館やお店を経営されている方の多くが「AIを入れたほうがいいのは分かるが、何から手をつければいいか分からない」という悩みを抱えています。

私たちが実際にどこから始め、何につまずき、何を後回しにしたかを見ていただくほうが、抽象的な説明よりも参考になると考えました。

Slackに常駐する「AI女将」

現場のスタッフが日々連絡を取り合うSlackに、「AI女将」と呼ぶ自動応答の仕組みを常駐させています。人ではなく、自動で動くプログラムです。

毎日やっていること

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朝の段取り配信。毎朝決まった時刻に、その日の担当と段取りをスタッフごとに自動で届けます。前の晩のうちに用意しておいた内容を、人の手を介さず配信します。
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夜のまとめ配信。その日にあった出来事、完了した仕事、届いた感謝の声をまとめて、責任者へ自動で報告します。
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質問への回答。スタッフから聞かれた質問に、知っている範囲でその場で答えます。答えられない質問は「まだ分かりません」と正直に伝え、責任者に転送します。
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困りごとの即時転送。設備の不調や体調不良など、急ぎで人に伝えるべき言葉が投稿されると、責任者へすぐに転送します。拾い忘れが起きない設計です。

「教えたら覚える」仕組み

一番工夫しているのは、この部分です。AI女将が答えられない質問が来ると、責任者へ転送されます。

教えたら覚える仕組みの流れ図

責任者がその場で回答すると、AI女将はその回答をそのまま覚えます。次に同じような質問が来た時は、責任者を待たずにその場で即答します。

実際に運用を始めてすぐ、こんな出来事がありました。あるスタッフが、施設特有の使い方についてAI女将に尋ねました。

AI女将はその場で答えを作らず、「その質問はまだ分かりません」と正直に返し、責任者への確認に回しました。存在しない答えを、それらしく作ってしまうことが一番怖いと考えています。

だから「知らないことは知らないと言う」を、最初から設計に組み込んでいます

コストの考え方

日常の配信・応答は、無料の範囲で動くクラウドの仕組みだけで動いています。AIモデルを呼ぶのは「まだ答えを知らない質問」が来た時だけです。

答えたことは自動で覚えるので、同じ質問への対応はどんどん無料の仕組み側に移っていきます。賢さを、日々のやり取りの中でゼロ円に近いコストで積み上げていく設計です。

スタッフの「マイページ」

スタッフ一人ひとりに、自分専用の仕事ページを用意しています。その日にやることがタスクのリストとして並び、終わったら指でタップするだけです。

スタッフ個人ページの実際の画面|その日のやる事リストとお願いリスト
スタッフ用「マイページ」の実際の画面。中央がその日のやる事リスト、下段の「できればお願いリスト」は余裕があれば引き受けられる仕事です。

全部のタスクが終わると、画面に「花丸」が出ます。その日の頑張りをその場で本人に伝える仕組みとして置いています。

ポイントは、タスクを1つ終えるごと・花丸をもらうごと・日報を書くごと・感謝カードを贈ったりもらったりするごとに貯まります。貯まったポイントは、まかないや休憩用のお菓子といった景品と交換できます。

1人では届かない大きな景品には、複数人で少しずつ出し合って届ける「合算」の仕組みも用意しました。

できる仕事が増えると、次の仕事のレベルが開放される段階制も入れています。シフトのカレンダーもこの画面で確認でき、来月の希望もここから提出できます。

管理者の「帳場」

支配人や管理者が旅館全体を見渡すための画面も、別に用意しています。稼働率、宿泊と日帰りの組数、その日の売上見込みが、開いた瞬間に1画面でそろいます。

管理者用ダッシュボードの実際の画面|稼働率・宿泊組数・日帰り組数・本日売上見込み
管理者用ダッシュボードの実際の画面。稼働率・宿泊/日帰りの組数・本日の売上見込みが1画面に並びます。右上には自動配信の稼働状況も表示されます。

この画面からは、その日のタスクの割り振りを直したり、部屋割りやシフトの充足状況を確認したり、お客さまの声を見返したりもできます。すべて同じ画面の中で完結する設計です。

この画面を作る時に大事にした考え方があります。「私たちは管理者であって、監視者ではない」という考え方です。

ポイントやランキングは査定の資料ではなく、褒める口実として使う。数字が悪い日は、責める材料ではなく声をかける合図として使う。

そう決めて設計しています。

検証を終えた予約連携。なぜ今のままでは足りないか

今使っている予約システムには外部連携の窓口(API)がなく、予約の情報をAI女将や帳場に自動で流し込めません。ここでは、その制約と検証の状況を整理します。

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今の制約。今使っている予約システムには、外部のシステムと自動でデータをやり取りする窓口(API)が公開されていません。そのため、予約の情報をAI女将や帳場に自動で流し込むことができません。
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検証が終わった段階。この制約を解消できる予約システムとして、Beds24というサービスを検討しています。実際の技術仕様書を読み込んで、必要な機能(予約情報の自動取得、空室照会、仮押さえ)がそろっていることを確認しました。契約や切り替えは、まだ行っていません。
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導入後に検討できること。予約データが自動でAIの仕組みに流れ込むようになれば、メールやLINEでのお問い合わせに対して、AIが空室と料金を案内し、必要な情報を会話の中で集めたうえで仮押さえをする、という使い方も検討できます。

ただしその先も、最終的な予約の確定はスタッフが確認してから行う、という二段階の設計を崩さないつもりです。

AIが叩き台を作り、人が確定する。この順番は変えません。

これから。電話対応までAIに任せる構想

ここは、まだ構想段階の話です。かかってきた電話に、AIが日本語の音声でその場で応対する技術は、すでに存在しています。

この技術を使えば、旅館にかかってくる電話の一次対応をAIに任せられるのではないか、と検討しています。

考えている設計の核は、単純な質問対応や伝言はAIが担い、複雑な相談やクレームの気配があればスタッフの携帯へすぐ転送することです。深夜の電話は、内容を録音・文字起こしして残し、翌朝スタッフが確認します。

いきなり予約の確定までAIに任せるのではなく、まずは質問対応と伝言から始め、信頼できることを確かめてから範囲を広げていく予定です。

この構想は、まだ実装していません。実現した時に、あらためて記事にします。

AIに任せていないこと

最後に、意図的にAIへ任せていないことも書いておきます。

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感謝の言葉。スタッフ同士が贈り合う感謝カードは、AIが代筆も要約もしません。書いた言葉をそのまま届ける「郵便屋」の役割に留めています。
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表彰・評価の最終決定。頑張りのデータはAIが集計しますが、誰を表彰するかを決めるのは人です。AIが出すのは「推薦」までで、決定と発表は人の言葉で行います。
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複雑な判断が必要なお客さま対応。困りごとやクレームの気配がある投稿は、AIが答えを作らず、必ず人に転送します。

AIに向いているのは、繰り返しの多い作業と、答えがすでに分かっていることです。人にしかできないのは、言葉に心を込めることと、最終的な判断です。

この線引きを、これからも守っていくつもりです。

よくある質問

旅館の業務は全部AIに任せているんですか。

いいえ。毎日繰り返す連絡・段取り配信・簡単な質問対応はAIと自動化の仕組みに任せていますが、最終確認や判断が必要な場面は必ず人が行います。感謝の言葉の代筆や、評価・表彰の決定はAIにはさせない、と決めています。

高額なシステムを導入しているんですか。

いいえ。土台は無料枠のクラウドサービスで動かしていて、AIモデルを呼ぶのは「まだ答えを知らない質問」が来た時だけです。答えたことは自動で覚えるので、同じ質問への対応はどんどん無料の仕組みに移っていきます。

使うほどAIの課金が減っていく設計の図解

予約システムはもうAIとつながっているんですか。

まだです。今使っている予約システムは外部連携の窓口が開かれていないため、AIの仕組みと直接つなげません。別の予約システムであれば連携できることを、実際の技術仕様を読んで確認した段階です。契約・切り替えはこれからの判断になります。

電話対応のAIはもう使えるんですか。

いいえ、まだ構想段階です。技術的にできることは調べていますが、実装はこれからです。導入する時は、まず簡単な問い合わせ対応から始め、複雑な相談は人に転送する設計にする予定です。

同じ仕組みを他の宿泊施設でも導入できますか。

はい。私たちがご提供しているAI導入支援は、この自社での実践がもとになっています。Slack等で日々の連絡・報告をやり取りしている現場であれば、業種を問わず応用できる部分が多いです。

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「何から始めればいいか分からない」という段階からご相談いただけます。私たちが自社の現場で実際に運用している型をもとに、御社の業務に置き換えてお話しします。支援内容のくわしい説明は「AI導入・業務効率化支援」のページをご覧ください。

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