私たちは自社で旅館を運営しながら、AI導入支援を仕事にしています。だとすれば、自分たちの現場で実際に何が動いていて、何がまだ動いていないかを隠す理由はありません。Slackに常駐する「AI女将」から、スタッフの個人ページ、管理者用の画面、検証中の予約連携、構想段階の電話AIまで、順番にお見せします。
「AIを使っています」とだけ言われても、何がどこまで本当か分かりません。まずは正直に、今の状態を分けて書きます。
ここから先は、この3つの段階を混ぜずに、それぞれ何をしていて何をしていないかを説明します。
私たちはAI導入支援を仕事にしているからこそ、自社で運用していない仕組みを人に勧めるのは筋が通らないと考えています。だから、うまくいっている部分だけでなく、まだ検証段階のものや構想止まりのものも、そのまま公開することにしました。
もう1つ理由があります。旅館やお店を経営されている方の多くが「AIを入れたほうがいいのは分かるが、何から手をつければいいか分からない」という悩みを抱えています。
私たちが実際にどこから始め、何につまずき、何を後回しにしたかを見ていただくほうが、抽象的な説明よりも参考になると考えました。
現場のスタッフが日々連絡を取り合うSlackに、「AI女将」と呼ぶ自動応答の仕組みを常駐させています。人ではなく、自動で動くプログラムです。
一番工夫しているのは、この部分です。AI女将が答えられない質問が来ると、責任者へ転送されます。
責任者がその場で回答すると、AI女将はその回答をそのまま覚えます。次に同じような質問が来た時は、責任者を待たずにその場で即答します。
実際に運用を始めてすぐ、こんな出来事がありました。あるスタッフが、施設特有の使い方についてAI女将に尋ねました。
AI女将はその場で答えを作らず、「その質問はまだ分かりません」と正直に返し、責任者への確認に回しました。存在しない答えを、それらしく作ってしまうことが一番怖いと考えています。
だから「知らないことは知らないと言う」を、最初から設計に組み込んでいます。
日常の配信・応答は、無料の範囲で動くクラウドの仕組みだけで動いています。AIモデルを呼ぶのは「まだ答えを知らない質問」が来た時だけです。
答えたことは自動で覚えるので、同じ質問への対応はどんどん無料の仕組み側に移っていきます。賢さを、日々のやり取りの中でゼロ円に近いコストで積み上げていく設計です。
スタッフ一人ひとりに、自分専用の仕事ページを用意しています。その日にやることがタスクのリストとして並び、終わったら指でタップするだけです。
全部のタスクが終わると、画面に「花丸」が出ます。その日の頑張りをその場で本人に伝える仕組みとして置いています。
ポイントは、タスクを1つ終えるごと・花丸をもらうごと・日報を書くごと・感謝カードを贈ったりもらったりするごとに貯まります。貯まったポイントは、まかないや休憩用のお菓子といった景品と交換できます。
1人では届かない大きな景品には、複数人で少しずつ出し合って届ける「合算」の仕組みも用意しました。
できる仕事が増えると、次の仕事のレベルが開放される段階制も入れています。シフトのカレンダーもこの画面で確認でき、来月の希望もここから提出できます。
支配人や管理者が旅館全体を見渡すための画面も、別に用意しています。稼働率、宿泊と日帰りの組数、その日の売上見込みが、開いた瞬間に1画面でそろいます。
この画面からは、その日のタスクの割り振りを直したり、部屋割りやシフトの充足状況を確認したり、お客さまの声を見返したりもできます。すべて同じ画面の中で完結する設計です。
この画面を作る時に大事にした考え方があります。「私たちは管理者であって、監視者ではない」という考え方です。
ポイントやランキングは査定の資料ではなく、褒める口実として使う。数字が悪い日は、責める材料ではなく声をかける合図として使う。
そう決めて設計しています。
今使っている予約システムには外部連携の窓口(API)がなく、予約の情報をAI女将や帳場に自動で流し込めません。ここでは、その制約と検証の状況を整理します。
ただしその先も、最終的な予約の確定はスタッフが確認してから行う、という二段階の設計を崩さないつもりです。
AIが叩き台を作り、人が確定する。この順番は変えません。
ここは、まだ構想段階の話です。かかってきた電話に、AIが日本語の音声でその場で応対する技術は、すでに存在しています。
この技術を使えば、旅館にかかってくる電話の一次対応をAIに任せられるのではないか、と検討しています。
考えている設計の核は、単純な質問対応や伝言はAIが担い、複雑な相談やクレームの気配があればスタッフの携帯へすぐ転送することです。深夜の電話は、内容を録音・文字起こしして残し、翌朝スタッフが確認します。
いきなり予約の確定までAIに任せるのではなく、まずは質問対応と伝言から始め、信頼できることを確かめてから範囲を広げていく予定です。
この構想は、まだ実装していません。実現した時に、あらためて記事にします。
最後に、意図的にAIへ任せていないことも書いておきます。
AIに向いているのは、繰り返しの多い作業と、答えがすでに分かっていることです。人にしかできないのは、言葉に心を込めることと、最終的な判断です。
この線引きを、これからも守っていくつもりです。
いいえ。毎日繰り返す連絡・段取り配信・簡単な質問対応はAIと自動化の仕組みに任せていますが、最終確認や判断が必要な場面は必ず人が行います。感謝の言葉の代筆や、評価・表彰の決定はAIにはさせない、と決めています。
いいえ。土台は無料枠のクラウドサービスで動かしていて、AIモデルを呼ぶのは「まだ答えを知らない質問」が来た時だけです。答えたことは自動で覚えるので、同じ質問への対応はどんどん無料の仕組みに移っていきます。
まだです。今使っている予約システムは外部連携の窓口が開かれていないため、AIの仕組みと直接つなげません。別の予約システムであれば連携できることを、実際の技術仕様を読んで確認した段階です。契約・切り替えはこれからの判断になります。
いいえ、まだ構想段階です。技術的にできることは調べていますが、実装はこれからです。導入する時は、まず簡単な問い合わせ対応から始め、複雑な相談は人に転送する設計にする予定です。
はい。私たちがご提供しているAI導入支援は、この自社での実践がもとになっています。Slack等で日々の連絡・報告をやり取りしている現場であれば、業種を問わず応用できる部分が多いです。
「何から始めればいいか分からない」という段階からご相談いただけます。私たちが自社の現場で実際に運用している型をもとに、御社の業務に置き換えてお話しします。支援内容のくわしい説明は「AI導入・業務効率化支援」のページをご覧ください。
ご相談は無料です。1営業日以内にご返信します。無理な営業はしません。