電話対応までAIに。
旅館の「次の一手」として検討していること

この記事は、まだ実現していないことについて書きます。旅館にかかってくる電話の一次対応を、日本語の音声で応対するAIに任せる構想です。「もうやっています」とは書かず、何を調べ、どんな設計を考え、どの順番で進めるつもりかを、そのまま公開します。

電話対応AIの構想|旅館の次の一手として検討していること
PLAN — 電話AI構想  ·  検討中(未実装)

なぜ電話か。旅館の電話の実情

旅館の電話には、独特のつらさがあります。かかってくる内容の大半は「チェックインは何時からですか」「駐車場はありますか」「今夜、空いていますか」といった、答えの決まった質問です。

それでも、電話が鳴れば手を止めて出なければなりません。一番困るのは、清掃や配膳のピーク帯、そして夜間という出られない時間帯です。

小さな宿では、電話番だけの人員を置く余裕はありません。「電話に出られなかった」は、そのまま「予約を1件逃した」かもしれない、ということです。

私たちは自社で旅館を運営しながら、日々の連絡・段取り・質問対応をAIと自動化の仕組みに任せる運用をすでに回しています(その中身は「旅館の現場でAIをどう使っているか、全部見せます」に書きました)。その次の一手として、電話をどうするかを検討しています。

技術はもう存在している

かかってきた電話に、AIが日本語の音声でその場で応対する。数年前なら夢物語でしたが、今はこれを実現する部品が実際に提供されています。

構成はこう考えています。既存の電話番号にかかってきた電話を転送し、クラウドの電話サービスを経由して、リアルタイム音声対応のAIにつなぎます。

自前でサーバーを立てなくても、公式に用意された接続の仕組みで直結できることが分かっています。AIは自然な日本語の声で応対し、通話の内容はすべて文字起こしして記録に残せます。

さらに先の構想として、予約システムとの連携が実現すれば(技術検証は完了していて、契約・切り替えは未定です)、電話のAIが空室を照会して仮押さえまで行う、という形も技術的には視野に入ります。メール・LINE・電話という3つの窓口が、同じ頭脳を共有する形です。

つまり、障壁は技術ではなく、運用の設計です。「どう設計すれば、お客さまにも現場にも迷惑をかけないか」ということが、ここでの本題になります。

想定している設計

私たちが考えている設計の核心は、「AIが全部に応えようとしない」ことです。

1
答えの決まった質問は、AIがその場で答える。チェックイン時刻、駐車場、アクセス、設備。この種の質問が電話の大半を占めます。
2
複雑な相談・クレームの気配は、すぐ人に代わる。会話の雲行きが変わったと判断したら、AIは粘らず、スタッフの携帯へ転送します。
3
深夜は、記録して翌朝へ。夜間の入電は用件を録音・文字起こしして残し、翌朝スタッフが確認します。人の睡眠を削らないことも、設計の一部です。
4
すべての通話を記録に残す。「言った・言わない」をなくし、どんな質問が多いかのデータにもなります。よくある質問はAIの知識に追加され、対応できる範囲が育っていきます。

この設計は、私たちがすでに運用しているSlack上のAIの設計と同じ思想です。知らないことは知らないと言う。複雑なことは人へ回す。

記録はすべて残す。文字の世界で検証してきた原則を、音声の世界に持ち込む形です。

電話AIの応対設計図。答えの決まった質問はAIが回答、複雑な相談は人に転送、深夜は記録して翌朝確認

段階の踏み方。いきなり全部は任せない

導入するとしても、一気には進めません。考えている段階はこうです。

第0段
電話番。質問への応対と伝言、そして人への転送だけ。予約は受けません。まず「営業時間外」と「手が塞がっていて出られなかった電話」だけをAIが受ける形から始めます。取り逃していた電話を拾うところからです。
第1段
電話予約の仮受け。予約システムとの連携が整った後の話です。AIが空室を案内し、必要な情報を伺って仮押さえまで行い、最終確定はスタッフが確認してから行います。AIが叩き台を作り、人が確定する。この順番は電話でも守ります。
第2段
一次受けの拡大。第0段・第1段の運用実績を見て、信頼できると確かめられた範囲だけ、AIが最初に出る割合を広げます。

大事なのは、各段階で「本当に大丈夫だったか」を通話記録で検証してから次へ進むことです。私たちは、検証していないものを信頼しない、と決めています。

電話AI導入の段階図。第0段は電話番、第1段は電話予約の仮受け、第2段は一次受けの拡大

コストの見込み

調べた範囲での見込みを、率直に書きます。電話番号の維持に月数百円です。

通話には、電話回線とAIの利用料をあわせて1分あたり十数円から数十円程度。仮に月100本、平均5分の通話だとすると、月数千円から1万円台に収まる計算です。

比較対象は、人を電話番として待機させる人件費です。夜間や繁忙帯をカバーするために人を1人張り付けることを考えると、桁が1つか2つ違います。

もちろんAIは人の接客の代わりにはなりません。ただ「決まった質問に答え、伝言を受け取る」という仕事に限れば、この価格差は無視できない、と考えています。

先にやるべきことが、ある

最後に、これから検討される方へ正直にお伝えしたいことがあります。電話AIは、AI活用の入口としては勧めません。

理由は2つです。1つは、音声はやり直しがきかないこと。

文字のやり取りなら、AIの回答を人が確認してから送る運用ができますが、電話は一発勝負です。

もう1つは、電話でAIが答えるための「答えの引き出し」は、文字の世界で育てておくほうが安全で安いことです。

私たちがSlack上のAIで「教えたら覚える」仕組みを先に育てているのは、この順番のためでもあります。文字で貯めた知識が、そのまま電話AIの頭脳になります。

まず文字のやり取り(社内の連絡、LINEやメールの問い合わせ)をAIと自動化の仕組みに乗せる。知識が貯まり、運用に自信がついてから、電話に進む。

遠回りに見えて、これが一番の近道だと考えています。

私たちがこの構想を実装したら、設計と結果をあらためて記事にします。うまくいった部分も、いかなかった部分も、そのまま書きます。

よくある質問

この電話AIは、もう動いているんですか。

いいえ、まだ構想段階です。実現に使える技術と構成は調べてありますが、実装はこれからです。実現したら、その結果をあらためて記事にします。

電話をAIに任せるのは、お客さまに失礼になりませんか。

設計次第だと考えています。想定しているのは、AIが全部を抱え込む形ではなく、簡単な質問と伝言だけを受け、複雑な相談やクレームの気配があればすぐ人に代わる形です。「電話がつながらない」ことのほうが、よほどお客さまを待たせてしまう、というのが現場の実感です。

費用はどれくらいを見込んでいるんですか。

電話番号の維持に月数百円、通話ごとに1分あたり十数円から数十円程度を見込んでいます。月100本・平均5分の通話なら、月数千円から1万円台の計算です。人を1人夜間に待機させる費用と比べると、桁が違います。

音声AIの導入を相談できますか。

はい。ただ私たちは、電話AIをいきなり勧めることはしません。文字でのやり取り(SlackやLINE)の自動化から始めるほうが、費用も失敗のリスクも小さいからです。現場の状況を伺ったうえで、順番のご提案からお手伝いします。

無料相談はこちら

「AIで何ができるか、うちの場合の順番を知りたい」というご相談を承っています。私たちが自社の旅館で実際に運用している型と、検討中の構想を分けて、正直にお話しします。支援内容のくわしい説明は「AI導入・業務効率化支援」のページをご覧ください。

ご相談は無料です。1営業日以内にご返信します。無理な営業はしません。

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