AIを1つ使うだけでも仕事は変わります。ただ、2つのAIを組ませて会話させると、できる仕事の幅がもう一段広がります。私たちは、Claude(クロード)を司令塔に、ChatGPT(チャットGPT)を作業役にして、自社サイトの全面リデザインを回しました。追加でかかった費用は、画像の生成代の約120円だけです。ただしこれは、2つのAIの月額プラン(それぞれ月20ドル前後から)に入っている前提での話です。この記事では、役割分担の考え方、暴走課金を防ぐお金の設計、実際の仕事の流れ、つまずいた失敗までを、実際の運用のまま説明します。
結論から先にお伝えします。2つのAIを組ませるときの肝は、対等に会話させることではありません。上下をつけることです。私たちは、次の分担で運用しています。
この体制で、自社サイト(oneism.jp)のトップページの全面リデザインと、全ページのデザイン調整を行いました。ここから、その中身を順番に説明します。
理由は2つあります。
1つ目は、得意が違うからです。AIには個性があります。私たちの体制では、会社の文脈を長く覚えて検品に強い方を司令塔にしています。画像の生成やコードの量産など、手数に強い方を作業役にしています。人のチームで、設計が得意な人と手を動かすのが速い人を組ませるのと同じ発想です。
2つ目は、作る側と見る側を分けたいからです。同じAIが作って、同じAIが見返すと、同じ見落としが残ります。別のAIに「意地悪な読者」や「発注を検討している経営者」を演じさせて採点させると、作った側では気づけない穴が出てきます。実際、私たちのサイトはこのレビューで「最初の画面だけでは何の会社か分からない」という急所を指摘されました。作った本人たち(人とAIの両方)は、誰も気づいていませんでした。
以前の私たちは、ブラウザの画面ごしに2つのAIを手動でつないでいました。片方の答えをコピーして、もう片方に貼る方式です。これは遅く、間に入る人が一番疲れます。今は2つのAIがパソコンの中で直接やり取りするので、人は設計と判断に集中できます。
使っている道具は3つです。どれも特別なものではなく、公式に提供されているものだけです。
お金の流れを整理すると、こうなります。2つのAIの会話・コード作成・レビューは、月額プランの範囲内です。何十回往復させても追加費用はかかりません。ただし各プランには利用枠があり、使い切ると回復を待つ形になります。追加で払うのは画像の生成代だけで、今回のサイト全面リデザインでは合計約120円でした。デザイン案5案の生成が約40円(1枚あたり8円前後)、その他の素材とテストで約80円です。
従量課金と聞くと、「AIが暴走して大量課金されないか」が一番の不安だと思います。私たちも同じ不安から始めました。答えは、使い方の注意ではなく、構造で防ぐことです。3重の壁を作りました。
この設計にしてから、安心して回せるようになりました。例えるなら、「1,500円だけ入った財布を渡す」ということです。財布ごと落としても、失うのは1,500円まで。カードは渡していない。この状態を最初に作ってから、仕事を始めます。
この体制で、自社サイトのトップページを作り直しました。実際の流れは次の5ステップです。
効果は数字にも出ました。「発注を検討中の旅館経営者」役のAIによる採点は、リデザイン前のページが64点でした。指摘を反映するたびに上がり、公開した版では73点になりました。その審査員は最後に「相談ボタンは押す」と書いています。点数そのものより、直すたびに指摘が入れ替わって前に進む感覚が、この仕組みの価値だと感じています。
ちなみに、この体制づくりからサイトの公開までは、実働2日でした。なお、AIの採点は公開前の仮の目安です。本当の答え合わせは、公開後の問い合わせ数や滞在時間などの実数で行います。そのための計測も、あらかじめ仕込んであります。
私たちが実際に使った手順の、最小版を置いておきます。専門用語が並びますが、1つずつAIに聞きながら進めれば大丈夫です。
最初の設定は30分ほどです。私たちはこの初期設定だけで、会話・実装・レビューが月額の範囲で回る体制になりました。
順調な話だけを書いても参考にならないので、実際につまずいた失敗を3つ共有します。
この仕組みは万能ではありません。正直に書きます。
まず、最初の設定にはターミナルの操作が必要です。コマンドをコピーして実行できれば十分ですが、黒い画面に強い抵抗がある方には、最初の壁になります。また、2つのAIの月額プランに入っていることが前提です。すでに片方を仕事で使っている方が、次の一歩として組む形が現実的です。
そして一番大事なことです。AIを2つ組ませても、仕事の設計と最終判断は人に残ります。むしろ、任せる部分が増えるほど、「何を作りたいか」「どこまでなら任せてよいか」を言葉にする力が問われます。丸投げで良いものができる仕組みではありません。
逆に、向いているのは、作りたいものがはっきりしていて、手数が足りていない事業者です。デザイン案を並べて選ぶ、完成物に厳しい目を通す、といった判断の仕事に集中したい方には、強い道具になります。
固定費は、2つのAIの月額プラン料金だけです(それぞれ月20ドル前後から)。会話や作業のやり取りに追加費用はかかりませんが、各プランの利用枠を使い切ると回復待ちになります。追加でかかるのは画像生成の従量課金だけで、1枚10円前後です。今回の自社サイト全面リデザインでは、追加費用は合計で約120円でした。
コードを書ける必要はありません。ただ、黒い画面(ターミナル)でコマンドを実行することへの慣れは要ります。コマンド自体はAIに聞けば教えてくれるので、最初の設定を乗り越えられるかが分かれ目です。
渡すものを絞って運用しています。作業役のAIに渡すのは、公開済みか公開予定の成果物だけです。顧客データや契約情報は渡しません。読ませたものは外部のサーバーに渡る前提で、渡す前に選別する運用にしています。
いいえ。何を作るかの設計と、できたものの検品と、世に出す最終判断は人が握ります。AI同士の会話は、人が設計した発注書に沿って行われます。放置で回る魔法ではなく、分担がはっきりした分業です。
優劣ではなく、得意が違います。だから組ませる意味があります。私たちの体制では、文脈の理解と検品に強い方を司令塔に、画像生成など手数に強い方を作業役にしています。
1つでも仕事はできます。ただ、作る側と見る側を同じAIにすると、同じ見落としが残ります。作る役と別の視点で見る役を分けると、品質が一段上がります。これは人のチームと同じ理屈です。