旅館のSNSというと、まず「映える写真を撮りましょう」と言われがちです。私たちの経験は、少し違いました。一番反応が良かったのは、きれいな写真ではなく、宿の欠点を先に書いた投稿でした。この記事では、投稿の中身に絞って、実際に効いた3つのことを書きます。写真の撮り方の話ではありません。
旅館のSNSで悩んでいる方に、長い前置きは要らないと思います。結論から書きます。私たちが宿のSNSを運用してきて、はっきり効いたのは、写真の映えではなく、投稿の中身のほうでした。効いたことは、大きく3つです。
この3つは、どれも高い機材や、写真の技術を必要としません。今日そのまま試せる、投稿の中身の話です。ここから先は、それぞれを、実際の数字と、気をつけたい点までつけて書いていきます。
ノウハウを書く前に、立場をはっきりさせておきます。私は、地方で廃業寸前だった旅館を引き継いで運営しながら、マーケティングの支援会社をやっています。外から助言するだけでなく、自分の宿のSNSを、自分で回してきた立場です。
私が関わってきたこの宿のSNSは、Instagram・Xなどの媒体を合わせて、フォロワーが3万人を超えています。数字を自慢したいわけではありません。ただ、ある程度の人数に向けて投稿を出し、その反応を見てきた、という前提だけ先にお伝えしておきたいのです。少ない回数の思いつきではなく、続けてきた中で見えたことを書きます。なお、この記事に出てくる数字は、すべてこの同じ宿のアカウントで見たものです。
もう一つ、先に書いておきます。この記事で紹介する数字は、あくまで「投稿がどれだけ見られたか(表示回数)」と「どれだけ返信がついたか」の話です。この記事で「反応」と言うときは、主にこの2つを指します。そして、欠点を先に書いた投稿ではっきり差が出たのは、表示回数のほうでした。ただ、これらの数字が、そのまま「予約が増えた」という意味ではありません。表示や返信が増えることと、予約が増えることは、分けて考えています。ここを混ぜて話すと、都合のいい記事になってしまうので、先に線を引いておきます。
この宿で、思い切って「弱点」をさらけ出した投稿を出したことがあります。書いたのは、こういう一文でした。「うちの部屋には、テレビがありません」。宿の不便なところを、隠すどころか、投稿の一番先頭に堂々と置いたのです。
白状すると、出す前はこわかったです。わざわざ欠点を先に言ったら、それを見た人が「じゃあ、やめておこう」となって、逆に選ばれなくなるのではないか。そう思っていました。
結果は、逆でした。この欠点を先に書いた投稿の「表示回数」(どれだけ多くの人の画面に届いたか、を示す数字です)を、同じアカウントで同じ時期に出した、ふつうの投稿を数本と並べて比べました。すると、比べる相手によって幅はありますが、いつものこの宿の投稿の3.5倍から3.9倍でした。それだけ多くの人の目に触れた、ということです。
ここは、念のため補足します。これはあくまで、一つの投稿の「表示回数」の結果です。フォロワーの数や、比べた投稿の本数、投稿の形式を、きっちりそろえて測った実験ではありません。ですので、なおさら「一件の手応え」として読んでください。表示が増えたからといって、そのまま予約や問い合わせが増えたと言い切れるわけでもありません。これだけで「欠点を出せば必ず伸びる」と断言できるわけでもありません。それでも、この一件では、隠すより出したほうが、はっきり多くの人に届いた。それは事実でした。
なぜ、こうなったのか。ここからは、一つの結果を見た私なりの解釈です。理由は、3つあったのだと考えています。
大事なのは、欠点をただ並べるだけで終わらせないことです。ここが肝心なので、強調しておきます。欠点の隣には、必ず「それでも選ばれる理由」を一つ添えます。「テレビはありません。そのぶん静かで、持ってきた本が驚くほど進みます」という形です。
これは宿以外でも同じで、「土日はお休みです。平日はゆっくり、一人ずつ対応できます」というふうに、欠点の隣に、その欠点があるからこそ生まれる良さを置きます。こうすると、「弱点の告白」が「これがうちの良さです」という宣言に変わります。欠点は、隠している間はただの弱点ですが、先に出した瞬間に「覚えてもらえる特徴」に変わります。
参考までに、宿でよくある「欠点」と、その隣に置ける「それでも選ばれる理由」の例を並べておきます。自分の宿に当てはめて、言葉を差し替えてみてください。
大事なのは、無理に欠点を長所と言いくるめないことです。事実は事実としてそのまま書いて、その隣に、その事実があるからこそ生まれる良さを、一つだけ静かに添えます。飾りすぎると、また「良いところだけの投稿」に戻ってしまいます。
この「欠点を先に出す発信」は、じつは再訪にもつながっていきました。同じ考え方でリピーターという数字をどう動かしたかは、「旅館のリピーター率を0%から13.8%にするまでにやったこと」にまとめています。
2つめは、投稿の締め方です。投稿の最後を、言い切りで終えるのではなく、読んだ人への「軽い問いかけ」で終えてみました。「みなさんは、旅先の夜、テレビとどう付き合っていますか」というような、答えやすい一文です。
この締め方に変えてから、返信の数がはっきり増えました。私たちがSNSを運用する中で測ったところ、問いかけで終える投稿は、そうでない投稿より、返信の数の「真ん中あたりの値」が6.5倍でした。真ん中あたりの値というのは、投稿ごとにばらつく数字を大きい順に並べて、ちょうど中央に来る投稿の値のことです。飛び抜けた1本に引っぱられない、実感に近い数字だと考えてください。
なぜ効くのか。SNSは、宣伝を貼る場所というより、会話が生まれる場所だからだと思います。言い切りで終わる投稿には、返す言葉がありません。問いを投げられると、人は答えたくなります。返信が増えると、その投稿はさらに多くの人に届きやすくなる。この流れが、静かに効いてきます。
ただし、ここには大事な注意点があります。「効くなら全部の投稿を問いかけで終えればいい」と考えるのは、間違いでした。実際にやってみると、毎回問いかけで締める投稿は、しつこく感じられて、かえって逆効果になります。私たちの感覚では、問いかけで締めるのは、投稿の2割くらいがちょうどいい。効く型でも、機械的に全部へ貼らない。これも一つの学びでした。
問いかけにも、良し悪しがあります。「ご予約はこちらから、お早めに」という締めは、問いのようでいて、じつはただの催促です。これでは返信は増えません。効くのは、相手が自分のことを話したくなる問いです。「みなさんの、忘れられない旅先の夜はどこでしたか」。「温泉に着いて、最初にすることは何ですか」。答えに正解がなく、思わず自分の経験を書きたくなる。そういう問いを選びます。
3つめは、数字の「見方」の話です。投稿を出した初日、反応が薄いと、つい「今回は失敗だった」とがっかりします。SNSを始めたばかりの宿ほど、この判断を急ぎがちです。
ですが、SNSのいいねや反応は、後から効いてくることが少なくありません。私たちの実感では、出した数日後から1週間ほどかけて、じわじわ伸びる投稿がよくあります。初日の数字だけを見て「不発だった」と決めるのは、たいてい早すぎる判断です。これは、誤った診断につながります。
この見方を知っているかどうかで、続け方が変わります。初日に反応がないからと、次の投稿の方針をすぐ変えてしまうと、本当は後から伸びていたはずの型を、自分で捨ててしまうことになります。だから私たちは、投稿の良し悪しを判断するときは、少なくとも1週間ほど様子を見てから、表示回数や返信の数で見比べるようにしています。
「毎日投稿しているのに、ぜんぜん反応がない」と感じている宿の方は、一度、1週間前に出した投稿までさかのぼって、数字を見直してみてください。初日には静かだった投稿が、じわじわ届いていることがあります。
もし数字を見る習慣がなければ、まずは「1週間前の投稿の表示回数」を一度メモしておくだけでも十分です。次の週に同じ場所を見れば、その投稿が後から伸びたかどうかがわかります。特別なツールは要りません。SNSの管理画面に出ている数字を、週に一度だけ見るところから始めれば大丈夫です。
ここまでの3つを、明日そのまま試せる順番にまとめます。新しく機材をそろえる必要はありません。今あるアカウントで、投稿の中身を変えるだけです。
この順番のポイントは、2の「それでも選ばれる理由」をセットにすることと、3を「全部には使わない」ことです。欠点だけを並べると、ただの短所リストで終わります。問いかけを全部に貼ると、しつこくなります。効く型ほど、置く場所を選びます。
言葉だけだと伝わりにくいので、投稿文の例を一つ挙げます。ありがちな投稿は、こうです。「本日は快晴です。露天風呂が気持ちいい季節になりました。ぜひお越しください」。悪くはありませんが、こういう投稿は世の中にあふれていて、埋もれます。これを、欠点を先に出す型に置き換えると、たとえばこうなります。「正直に言うと、うちの部屋にはテレビがありません。そのぶん、夜はとても静かです。持ってきた本が、驚くほど進みます。みなさんは、旅先の夜を、どんなふうに過ごしたいですか」。宣伝の言葉から始めるのをやめて、欠点とその裏返しから始める。そして最後を問いかけで締める。それだけで、同じ宿の投稿が、ぐっと読み手の自分ごとになります。
SNSは、あくまで集客のうちの一つの柱です。広告や公式LINEと組み合わせて、どういう順番で効いたかは、「旅館の集客方法まとめ」に、実際にやって効いた順で書いています。
ここまで、効いた話を中心に書いてきました。最後に、大事な注意点を書きます。
この記事で紹介した数字は、どれも「投稿が見られた」「返信がついた」という、SNSの中での反応です。それが、そのまま「予約が増えた」という意味ではありません。表示が3.5倍になっても、その先の予約につながらなければ、宿の売上は動きません。私たちも、表示のあとの予約まで含めて、今も確かめている最中です。ここは、はっきり分けて考えています。
だから、もし自分の宿でも試すなら、欠点を先に出した投稿と、ふつうの投稿を、同じ曜日・時間帯でいくつか出してみて、1週間後に、表示回数だけでなく、そのあとの問い合わせや予約まで並べて見比べるのがおすすめです。表示が増えても、その先の予約に効かなければ意味がないからです。
もう一つ、この記事で触れなかったことがあります。それは、SNSの運用を「だれがやるか」という体制の話です。投稿の中身と、運用の体制は、別の問題です。私たちがSNSの運用をAIと人でどう分担しているかは、「SNS運用を「AIと人」で分担する具体的な線引き」に分けて書いています。この記事は、あくまで「何を投稿すると効くか」という中身に絞りました。
白状すると、これは私が最初から分かっていたことではありません。むしろ最初は「欠点なんて出したら選ばれなくなる」と思っていた側です。こわごわ出してみたら数字が良かったので、後から「なるほど、そういうことか」と理解した、という順番でした。もし今「うちにも言いにくい欠点がある」と思った方がいたら、それはたぶん、まだ使っていない一番の武器です。一度、投稿の先頭に、理由つきで出してみてください。
取れます。私たちが一番反応を取れた投稿も、特別に映える写真ではありませんでした。効いたのは写真の見栄えより、投稿の中身です。宿の欠点を正直に先に書く、締めを問いかけにする、この2つは、プロのカメラがなくても今日からできます。写真は「きれい」より「正直」のほうが、宿の場合は届きやすいと感じています。
その心配はよくわかります。私も出す前は同じことを思いました。ただ、欠点は「それでも選ばれる理由」とセットで出すのがコツです。たとえば「テレビはありません。そのぶん静かで、持ってきた本が進みます」という形にします。こうすると、合わない人は先に離れ、合う人にだけ深く届きます。全員に向けた投稿より、結果として宿に合うお客様が残りやすくなります。
この記事は媒体えらびではなく、投稿の中身の話です。ですので、まずは今いちばん続けられそうな1つに絞ることをおすすめします。大事なのは媒体の数ではなく、正直に書けているか、締めで読者に問いかけているか、という中身のほうです。運用をAIと人でどう分担するかは、別の記事にまとめています。
SNSのいいねは、後から効いてくることがあります。私たちの実感では、投稿した数日後から1週間ほどかけて、じわじわ伸びるものが少なくありません。ですので、出した初日の反応だけで「これは失敗だった」と決めるのは早すぎます。やめどきを判断するなら、1週間ほど様子を見てから、表示回数や返信の数で見比べるのがおすすめです。
自分の宿の「言いにくい欠点」を、どう魅力に変えて発信するか。一緒に言葉にするご相談を承っています。私自身が宿を運営しながらSNSを回している立場で、実感をもとにお話しします。支援内容のくわしい説明は「旅館・宿の集客支援」のページをご覧ください。
ご相談は無料です。1営業日以内にご返信します。無理な営業はしません。